もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら --ドラッカーは人生と政治にも効く《宿輪純一のシネマ経済学》
実は、筆者は「経営」も専門の1つである。以前、大学院で教鞭を執っているとき「国際金融」の他にも「企業戦略」を教えていた。そんなこともありドラッカーはよく読んだ。『マネジメント』(完全版)もいいが、『ネクスト・ソサエティ』も好きである。
ドラッカーはイノベーション(革新)を企業の基本機能の1つとして重視している。イノベーションとは、新しく組み合わせることで、新しい価値が生まれることをいう。本作品(いわゆる『もしドラ』)も、まさに経営学の父ドラッカーと女子高生(しかもAKB48)を組み合わせるということで、新しい価値を創造し、まさにそれを実践している。
その成果はすごい。この青春ドラマは2009年12月に発売されてから、累計発行部数200万部を突破しているという超ベストセラーとなった。最近NHKでも、アニメ版を放送している。
ある都立の普通高校がその舞台。病床の親友に代わって、都予選では一回戦で敗退する野球部のマネージャーをすることになった女子高生のみなみ(「タッチ」の南ちゃんをすぐ連想させる名前だ--演じるのは、AKB48で1、2位の人気を争う前田敦子)。しかし、エースをはじめ、部員の大半は練習をさぼって遊び放題でどうしようもない。途方に暮れたみなみは、マネージャーの仕事について書かれた教本を探すことにする。
ところが、マネージャーの本を買おうとしたところ“間違えて”『マネジメント』を買ってしまった。しかし、読んでみたらなんと面白かったという。彼女はピーター・ドラッカーのロングセラー『マネジメント』(エッセンシャル版)に感動し、ドラッカーの理論を野球部のマネージャー活動の中で、多少、無理があるものの実践していこうとする。
そうはいっても、青春ドラマであり、感動的なムードが特に後半盛り上がっていく。親友も死んでしまう系は、筆者は苦手であるが、ハッピーエンド的な結末に向かっていく。そういったストーリーの中でドラッカー理論の説明が微妙に入ってくる。
ドラッカーは1909年に、イノベーション理論を確立したシュンペーターと同じオーストリアで生まれた。その後、73年に『マネジメント』を書いた。この本で経営学が始まったとされ「経営学の父」ともいわれている。74年に日本語訳が出版され、“経営”の良書として多くの日本人に読まれている(そのころ日本が成功事例として書かれていた)。