もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら --ドラッカーは人生と政治にも効く《宿輪純一のシネマ経済学》

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 これは個人的な意見に近いが、彼の理論は経営学というよりは、彼の考えを述べる「哲学」により近いように思う。本作の書籍『もしドラ』でも、特に顧客、マーケティング、専門家、強み、イノベーション、人事、真摯さとドラッカーの要点を選んでいる。特にドラッカーのほうが組織にフォーカスを当てているが、筆者は西洋版の『論語』の様なものであるからこそ、いつまでも読まれるのであろう。
 
 筆者の講義では、そもそも経営学、特にドラッカーは、実は「個人の生き方」に最も活用できると教えている。結局、この世の中では、個人も企業のようなものである。そして、いつも競争下にあり、個性を持って強みを強くして「自分ブランド化」していくしかない。それはまさに経営であり企業戦略である。
 
 誰でも代替の利く組織の歯車になりたいと思う人はあまりいないはずである。その点で、ドラッカーは人生論の様な部分もまた多く、非常に参考になる。

もう1つ筆者の講義で教えているのは、同じく、企業を超えて最大の組織である「政治・政府」にも活用できるのではないかということだ。政治・政府に“経営”の概念をもっと入れた方がよいのではないか。ドラッカーを学べば、組織の顧客や目標、そして事なかれ主義に陥らず、つねにイノベーションやマーケティングを行い、自己改革していくことを全員で確認できる。そうすれば少なくとも、議論の拡散は防げる。

もしかしたら『もし議員さんが、ドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という続編ができるかもしれない。いや『もし議員さんが「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読んだら』かもしれないが。


(C)2011「もしドラ」製作委員会

しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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