メタがGAFAMの中で異質の「AI戦略」を貫く真意 コミュニティの会社ならではの独特なバランス

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コミュニティに特化したAI技術の開発に力を入れるのには、メタバース事業とAIの相性が良いという側面もある。

メタが描く将来像は、仮想空間や現実空間をリアルタイムにスキャンして再構築したデジタル空間、もしくはそれらを複合化した空間の中で、人々がコミュニケーションする”場”をさまざまな形態で提供することだ。

そのような場は、オフィス空間や商談の場、同じ遊び(ゲーム)に集まる人たち、特定のジャンルや趣味、他愛のない話題で集まるコミュニティまで、あらゆるレイヤーで生まれる。そうしたコミュニティに利便性やウィットネス、変化を与える切り口として、AIは役立つだろう。

メタのマーク・ザッカーバーグCEO
自社コミュニケーションツールに搭載するAIの新機能について説明するザッカーバーグ(筆者撮影)

では、AIやメタバースにそれほど投資する価値があるのか。

まず、SNSにおいてメタはよい数字を出している。X対抗の「Threads」に話題が集まりがちだが、TikTokに対抗したInstagram上の短編動画「リール」は年間収益が100億ドルに達し、1年間で3倍以上の規模に成長した。

WhatsAppは日本におけるLINEのようなプラットフォームだが、有料メッセージングやビジネス・メッセージングを開始して、ビジネスユーザーとパーソナルユーザーが混在する中で収益性を高めようとしている。

これらのSNS上でマーケティングを展開する企業は、今回発表された一連のAI機能を、自社の価値観を理解する擬似人格を通じたプロモーションサービスの開発にも応用できる。

例えばEmuによるスタンプ生成機能を企業がスポンサードすることで特定のキャラクターを挿入したり、AIチャットサービスでも自社の製品やサービスを愉快に紹介させてブランドストーリーを語るAIが登場したりするような未来はありそうだ。

赤字は拡大する見通しだが…

一方でメタバース事業は、会計上は引き続き損失しか生み出さない。

2021年と2022年のメタバース事業の損失はそれぞれ102億ドルと137億ドルで、2023年には同部門の損失がさらに拡大するとメタの経営陣は予告している。すでに第1四半期と第2四半期は39億ドルと37億ドルを営業損失として計上しており、新製品のQuest 3が売れたとしても、赤字拡大は免れない。

しかしザッカーバーグは、決して赤字拡大を卑下してしない。

Quest 3は“より良いQuest 2”であり、優れたVR/MR技術を応用したゲームプラットフォームだ。残念ながら視線入力や虹彩認証などはなく、ビジネス用途には不完全だが、それでも将来を見据えた発展性は備えている。

メタにとって重要なことは、現代の価値観におけるSNSのさらに先にある未来において、自分たちのサービスプラットフォームがネットコミュニティの中心にあることだ。収益化するにはまだまだ時間がかかるだろう。しかし、彼らの強みを次の世代でも発揮するために必要な痛みと考えているのだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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