メタがGAFAMの中で異質の「AI戦略」を貫く真意 コミュニティの会社ならではの独特なバランス
28のAIキャラクターは近日中に提供されるという。前述したLlama2が”強化学習でカスタムLLMを開発しやすい”ように設計されているのは、こうしたキャラクターを付与したLLMを構築するため、と考えれば腑に落ちる。
Facebookに始まり、InstagramやWhatsAppなど、つねに異なる世代で使われるパーソナルなコミュニティスペースで事業を行ってきたメタは、コミュニティの活性化や、次世代コミュニティ創出のために投資を行い、自社でサービスも提供する一方、それ以外の領域には手を出さない。
AIやメタバースの技術も、メタにとってはあくまで次世代のコミュニティ作りに役立てるためのものだ。メタとしては、Llama2の特徴を活かしてカスタムLLMを事業展開するパートナー企業を増やすことで、Llama2の性能、品質を上げていく算段だろう。オープンソースとして他社に別の領域で商用利用を進めてもらうことで、自分たちの使いたい技術をブラッシュアップし、さらに前進させることができるというわけだ。
画像生成AIもコミュニケーションの手段
メタは企業向けに、AIアシスタントキャラクターをカスタマイズして作成できる「AI Studio」というツールも提供し、こうした相乗効果を加速させる。ユーザーが多いほど問題が洗い出され、技術進化の方向が見定めやすくなる。エンドユーザーにも、自身で手軽にカスタムLLMを構築して公開する手法を用意するという。
AI Studioは数週間内に、エンドユーザー向けサービスは2024年までに、ベータ版からサービスを立ち上げる。
一方、画像生成AIのEmuについて、ザッカーバーグは「5秒で生成できるが、それでも日常的にSNSを使う人は待たされると感じるようだ」と話した。
この言葉からも、他社が開発する画像生成AIとは、その目的やベンチマークが異なることが読み取れる。Emuの技術を応用することで、Instagram上などでオリジナルのスタンプを作成したり、自撮り写真の改変を行ったりできる。どの機能も”5秒以内”という速さを重視した設計なのは、SNSユーザーが待てるギリギリの時間としての見積もりがあるからだろう。
つまりメタが主眼とするのは、イラスト生成ではなく、あくまでコミュニケーションツールとして楽しく使うことなのだ。同じジャンルの技術ではあるものの、アドビがプロフェッショナルツールのCreative Cloudに組み込んでいるものとは方向性がまるで異なる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら