今こそEUとの経済連携協定(EPA)を推進すべき--東日本大震災からの経済復興に向けて
実現すべき明日の日本
こうした認識に立てば、われわれが構想すべき産業や経済社会の方向性は、平たく言えば、内向きになって「守り」を固めることではなく、「変わる」ことだと思う。もちろん、日本の伝統や産業の強みを活かしながら、日本らしく変わればよいのだ。
古来より、稲作や律令制度から、文化や産業技術まで、あらゆる知恵や思想を他国から取り入れて自在に利用してきたのが日本である。未来においても、自由でオープンな経済社会を維持する中で、個人や経営者が、それぞれのアイデアを活かしながら自由に明日を構想すべきと考える。
その一環で、筆者は民主党APEC・EPA・FTA対応検討PT(プロジェクト・チーム)の事務局長として、かねてからEPA(経済連携協定)やTPP(環太平洋経済連携)の推進を主張してきたが、EU(欧州連合)とのEPA交渉を開始し、その締結に向けて努力すべきだと提言したい。
ヨーロッパとの経済連携を
日本は、これまで、人権や合理的な思考、多様性を許容する寛容さといった価値観や、それを基礎にした社会制度や知識・技術をヨーロッパから学んできた。しかし、現在ではともに先進国として、経済社会の成熟化や人口の高齢化といった問題を抱え、21世紀の経済社会像をいかに見出すか、模索している。
一方で、日本とEUは、パレスチナ支援、ソマリア沖の海賊対策、アフガニスタンにおける警察訓練支援など、幅広い分野で2国(地域)間にとどまらない関係を強化してきた。防災や原子力利用の安全性といった、今回の震災で一層明確に認識された日欧が共有する課題についても、両者が協力する意義が大きい。
経済面では、世界のGDPの30%弱(16兆ドル超)を占めるEUは、これまで日本が締結したすべてのEPA相手国の合計に匹敵する経済規模であり、中国、米国に次ぐ第3位の貿易相手(貿易額約13兆円、シェア約12%)である(日本がすでにEPAを締結した国の日本の貿易額に占めるシェアは、タイ3.4%、インドネシア2.8%、マレーシア2.6%、シンガポール2.4%、フィリピン1.3%、ベトナム1.2%、スイス1.1%、メキシコ0.9%、下図参照)。