今こそEUとの経済連携協定(EPA)を推進すべき--東日本大震災からの経済復興に向けて
また、日本が受け入れる対外投資残高のシェアでは、米国に次ぐ第2位で約7兆円である。現在、EUには約3300社の日本企業が進出し、EUの就業人口約2億人の0.2%に相当する40万人以上の雇用を創出している。
■日本の貿易相手国と貿易額シェア(濃い青は日本とのEPA締結済みの相手国)
(出典:経済産業省資料)
このように、日本が経済面での連携を進めるパートナーとして、EUには親和性があるうえに、意義が大きい。
進むルール作りに参加を
加えて、日本がTPP参加への方向性を打ち出したことで、アジア太平洋地域の新興国のダイナミズムに乗り遅れまいとするEU側も、日本との経済連携を進める意欲を示している。EUには日本の震災復興需要に乗り遅れまいという気持ちもあろう。しかし、困難な時期だからこそ、彼らの意欲を前向きに受け止めるべきではないか。
さらに言えば、日本が震災の影響で歩みを止める間も、5月19−20日にはAPEC(アジア太平洋経済協力)貿易担当大臣会合が米国で開催され、TPP参加国拡大の協議も続く。二国間のFTA(自由貿易協定)/EPAも各国で議論が進んでいる。こうした中で、日本だけがルール作りに取り残されるのは得策ではない。
加えて、日本がこれまでに締結したFTA/EPAは11であり、日本の貿易総額の約16%をカバーするに過ぎないが、EUはすでに29のFTAを締結し、域内貿易も含めれば70%もの貿易が自由化されている(下図参照。対外貿易のFTAカバー率は30%)。日本はEU市場へのアクセスに関して、大きく出遅れている。
■EUの貿易相手国と貿易額シェア(濃い青はEUとのFTA締結済みの相手国)
震災によって、非常時においても、資源や食料を海外から安定的に供給できる体制の重要性を、私たちは再認識した。貿易自由化・経済連携による供給先確保は率先して取り組むべき課題である。