AI半導体・NVIDIAが「ひとり勝ち」した納得背景 決算書から見えた「事業シフト」の全貌とは
営業利益が減ったもう1つの原因は、営業費用の増加です。前掲の表から内訳をみると、研究開発費が2899億円(前期比39.3%)増加(8)、R&D比率も7.6ポイント上昇(9)しています。これに加え、当期は特別要因としてアーム社の買収解除費用(※)が1894億円発生した(10)ことで、営業利益が押し下げられました。しかしこれらは戦略的費用の増加と一時的な減益要因であり、ネガティブなものではありません。
※2020年、エヌビディアは、ソフトバンクグループ傘下の半導体メーカーであるアーム社を、最大400億ドルで買収することを発表。いったんは合意に至るが、その後、欧米の独禁規制をクリアできず2022年に断念。契約解除となった。
需要増に量産体制の構築急ぐ さらなる跳躍に向け雌伏の時
続いて、体つきと血流を調べていきます。貸借対照表をみてみましょう。
当期は総資産が4207億円(6.8%)減り約5.8兆円になりました(11)。
主因は流動資産の減少です(12)。前期から現金が1959億円(70.3%)増えた(13)のに対し、有価証券が1.3兆円(48.4%)も減少(14)。一方で、在庫は3576億円(98.0%)増加(15)。棚卸資産回転期間も、101日から162日に長期化しています。
これはGPUの急激な需要増に対応して、急遽増産をかけたためです。次期には売り上げに変わるため、ジャンプの前に屈んでいるところだと言えます。
また固定資産をみると、有形固定資産(16)の割合が総資産の9.2%しかなく、自前の設備を持たないファブレス経営の特徴が出ています。体にたとえると、筋肉がなく、頭脳(GPUの設計)が巨大化している宇宙人的なイメージです。
その割に、自己資本比率は53.7%と、骨格は太くて丈夫。前期から、短期・長期の借入金は10億円増えました(17)が、有価証券を現金同等物に含めれば純有利子負債はマイナスであり、実質無借金です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら