大手が敬遠「ブラジル危険地帯の宅配」に挑む人達 「犯罪率高い貧困街に荷物を」配達人に密着取材

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創業から2年。リオデジャネイロ市内に4カ所、サンパウロ市とその隣町に2カ所の物流拠点を構え、計30人のスタッフを雇うまで成長した。取引先はアパレルやペット産業、量販店などさまざまな業種で、いずれも国内で知名度の高い企業ばかりだ。

配達件数は毎月伸びており、2023年8月はサンパウロとリオデジャネイロの合計が約2万件だったのが、9月は13日間でその数を越えた。

リスクエリアの配達人に密着

配達に危険は伴わないのか? サンパウロ市内北部にある拠点の配達員であるパウロ・ヴィエイラさん(39)に密着した。

サンパウロ市北部の配達を担うパウロ・ヴィエイラさんの前職は……(写真:筆者撮影) 

その日の配達品数は計13点。大手量販店Eコマースの商品を配達拠点で受け取ると、マイカーのトランクと後部座席に詰め込み、正午過ぎに出発した。ヴィエイラさんの自動車は経年劣化が著しいが、「リスクのあるエリアでの配達には、このくらいのほうが人目につかなくていいんです」と笑う。

効率が良いとされる配達先の順番は、スマホのカーナビ機能で表示されるが、ヴィエイラさんは必ずしもその指示に従うわけではない。ときには裏道を通り、順序を変えることもある。

土地に詳しいわけを尋ねると、「以前に12年間警察官をしていたんです。パトロールしていましたから、担当のサンパウロ北部地域の道は貧民街でも頭の中に入っています」。

配達中の車の中で。「実はファベーラの注文者のほうが応対がていねいなんです」とヴィエイラさん(写真:筆者撮影) 

元警察官で、エリアも熟知。そんなヴィエイラ氏と一緒なのでファベーラに入った緊張も解け、まさに大船に乗ったような気分で助手席に座っていたら、「一旦カメラをしまって! 次の届け先は麻薬の売人が多い場所だから」とギアを握っていた手で撮影を制された。

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