大手が敬遠「ブラジル危険地帯の宅配」に挑む人達 「犯罪率高い貧困街に荷物を」配達人に密着取材

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創業したのはCEOのサンデルソン・パジェウ氏(30)と大手企業での勤務経験がある3人の共同経営者たち。だが、なぜファベーラへの宅配なのだろうか?

「ファベーラとその周辺のリスクエリアを“治安上の危険が伴う”という理由で配達の対象外としている大手配送業者が多いので、それらの地域の住民はネット注文がほとんどできなかったんです。都市郊外の住民の7割がネット注文を諦めたという調査結果もあります」とパジェウ氏。

「大手が参入していない未開拓な市場だからこそ、ビジネスチャンスがあるんです」と自信に満ちている。

配達用バッグと自転車を見せてくれたナポルタCEOのサンデルソン・パジェウ氏(写真:筆者撮影) 

とはいうものの、多くの利益を「入れ食い」状態で獲得できる「ブルーオーシャン」のイメージとはほど遠い。何より貧民街の住人たちはどのように宅配を注文し、決済するのだろうか。

「意外に思われるかもしれませんが、実はファベーラでもほとんどの人がスマートフォン(以下、スマホ)と銀行口座を持っているんです」とパジェウ氏。銀行口座普及の背景には近年、スマホからでも簡単に口座が開けるデジタル銀行が爆発的な人気を博している経緯がある。

リスクエリアにこそ起業のチャンス

事業を始めたのは共同経営者のうち2人が在住するリオデジャネイロだった。700万人近い人口を抱えるブラジル第2の都市だ。

ナポルタはファベーラの一歩外側の比較的安全な場所に物流の拠点を構え、そこでファべーラ住民からの注文品をメーカーや販売店から預かる。そしてその先のファベーラやリスクエリアにある住宅まで配達する。

丘の上とその周辺に貧困街ファベーラがあるサンパウロ北部ブラジランジア地区(写真:筆者撮影) 
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