部外者への警戒心から見張りがいたり、隠しカメラもあったりするとのこと。写真を撮られて当局に通報されたりすることを恐れる売人たちに言いがかりをつけられたり、カメラを奪われる危険性があるという。さすがに詳しいのは道順だけではない。
ファベーラ内は道が複雑なこともあってナビゲーションアプリが誤った地点を指すケースがあった。リスクエリアでの配達は道順や治安の把握に加えて、臨機応変な判断が必要であるため、誰にでもできる仕事ではないことを実感した。
パジェウ氏によると、「すべてのハブの管理者と配達人には地元の人を雇っています」とのこと。同行させてもらったヴィエイラさんが所属する配達拠点の責任者もまた、NGO団体を主宰することで信頼されている地域のリーダーだ。
それぞれの土地で顔が利く人に管理を任せて、各地で雇用を生みながら対象エリアを広げていくのがナポルタの経営方針。それは大手配達業者にはできないことだろうとパジェウ氏は自負する。
貧困エリアの生活改善を願って
貧困層を対象としたビジネスを始めた理由を尋ねると、自身も苦労をした経験があったのだという。10代のころには母親が作るケーキを路上で売って家計を助けたこともあった。
学業の成績が優秀だったことから、奨学金を得て進学した大学では情報システムを専攻した。在学中にはマイクロソフト社サンパウロ支部で研修を経験し、ゲーム機器をオンライン販売する会社を立ち上げるなどの経歴を積んできた。
そんな経験をしながら、ITのノウハウを活かして基本的なサービスが行き届いていない人たちの生活を改善していきたいと思うに至ったのだそうだ。
「ファベーラには確かに危険はありますが、決して成長が望めない小さな市場ではありません。ブラジル全土には1万1000カ所のファベーラがあり、その人口は1700万人に上ります。仮にファベーラ全体を1つの州と考えたら、人口規模でブラジル4番目の州になります。経済規模では年間約2000億レアル(日本円で約6兆円)の消費があるんです。これはかなり大きなマーケットです」と語るパジェウ氏。その目には広大な未開拓地が映っているようだった。
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