変速機は(白状すると)私が嫌いな無段変速機CVTだが、富士スピードウェイのショートコースで乗ったかぎりは、加速の追従性にも優れていて、うれしい驚きを得た。
「Dレンジ制御といって、減速/旋回/再加速がスムーズに行えるよう、ドライバーの意図を読み取るように、一定のトルクを保持する機能を採用しました」
開発担当の遠藤邦彦チーフエンジニア(CE)は、「走りが期待以上だった」という私の感想に対して、上記のように話してくれた。
この走りを実現するに当たっては、ボディ剛性、フロントサスペンションのジオメトリー、排気管が通るトンネルの剛性、ボディへのリインフォースメントの追加、ねじり剛性、ステアリング剛性など、ほぼあらゆる点を見直したという。
「ドライバーとクルマが一体となり、いつまでも運転していたいと思える操縦性」というプレスリリース内の文言が、すぐ私の頭にも浮かんだほど。
一方、今回のショートサーキットでの試乗ではわかりづらかったが、直進安定性と乗り心地をともに向上させたことも強調する。
ホイールベースが2580mmと現代の水準では短めのため、上記のように各所に補強を加えるなどの見直しをしたようだ。コーナリング性能は高いので、うまく両立させたのだろう。市販されたあかつきには、高速道路でドライブするのが楽しみだ。
乗り心地のよさについては、LMと同様、構造用接着剤と減衰用接着剤をうまく使いわけ、「人に近いところには、乗り心地に効く減衰用接着剤を多めに使いました」(遠藤CE)という。
ここには、開発コンセプトである「コンパクトラグジュアリー」としての側面を強化する目的もあるのだろう。
基本シャシーを共用するのは、トヨタ「ヤリス」だ。ヤリスも全方位的によくできたモデルだが、LBXはここで書いてきたように“味わい”が異なっている。単にバッジとボディが違うだけのクルマではない、という印象だ。
メルセデス・ベンツと異なるレクサスの戦略
コンパクトからラグジュアリー、そしてミニバンやクロスカントリー型SUVもラインナップに持っているという点では、トヨタ自動車とメルセデス・ベンツはすこし似ている。
でも、メルセデス・ベンツは、現在のラインナップからAクラスとBクラスというコンパクトモデルを落とし、より上級モデルに力点を置いていくとか。
トヨタの場合、そうはいかないだろうから、ヤリスのようなモデルは当然残る(それに売れている)。そこからレクサスブランドのコンパクトハッチバックを開発するのは、1つのソースをマルチユースする企業戦略として、うなずける。
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