「2020年9.4兆円の赤字」を大幅に減らす方法

「社会保障費抑制」への具体的な道筋とは

そのトラウマもあって、前掲の自民党の「財政再建に関する特命委員会報告(中間整理)」では、「金額ありきで財政再建のために社会保障費を削減するということではない。」と明記されている。

「金額ありきでない社会保障改革」はできるのか。それは十分可能である。改革の方向性について、多くの賛同を得て合意を形成し、改革を実行することで歳出抑制(社会保障の場合は歳出が純減することはないから、自然増を予定より抑制すること)という果実を得る方法だ。改革の方向性を共有して着実に実行することで、社会保障制度への信頼や持続可能性も高まり、保険料負担や利用者負担も抑制でき、ひいては財政収支の改善にも寄与する。

「数字ありき」ではない「地域医療改革」を模範例に

では、(少なくとも今の与党で)賛同を得て合意を形成できた改革策はあるのか。意外にも、すでにあるのだ。

それは、地域医療構想、医療費適正化計画、そして介護保険における地域支援事業である。本連載の拙稿でも、地域医療構想については、「少子高齢化社会でも日本の医療費は見直せる/地方の医療を救う『病院再編』とは?」、介護保険における地域支援事業については、「変更必至の介護制度、今後の主役は市町村/若者に不利な現状、法改正は不公平改善の好機」で詳述している。

繰り返すが、地域医療構想も地域支援事業も、各地域での医療や介護がよりよくなるように設けられた仕組みであって、財政健全化のための仕組みではない。

だが、第2次安倍内閣において、社会保障制度改革国民会議や与党内での議論も経て、2013年12月に社会保障改革プログラム法(正式名は持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)が成立し、社会保障改革の方向性が盛り込まれた。この社会保障改革プログラム法を踏まえて、2014年6月に医療介護総合確保推進法(正式名は地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)が成立した。

この医療介護総合確保推進法は、前述した地域医療構想や地域支援事業の拡充を根拠づけている。もちろん、地域医療構想も地域支援事業の拡充も、2015年度から策定、実施されることとなるから、成果が表れるのはこれからである。ただ、少なくとも政府・与党ですでに合意を得て進められる政策手段である。

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