「井ノ原氏に拍手」に感じた日本メディアのヤバさ 1回目の会見と決定的に違ったポイント

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インマンはまた、今回のスキャンダルに対する日本の反応を、数百人もの人々に性的暴行をおこなったイギリスの有名司会者、ジミー・サヴィルのスキャンダルに対するイギリス人の反応と比較してこう語る。

「ジャニーが存命中、同氏が所属事務所の少年に性的虐待していたことが民事裁判で確認されたが、それでもその事実はメディア、芸能界、テレビ局、ジャニーズ事務所、警察によって無視され、深刻に扱われることはなかった。事務所はジャニーが従来通り働くことを容認し、裁判所が指摘した加害を繰り返させた」

一方、「サヴィルの場合、亡くなった後に性的虐待疑惑が浮上した。新聞社やテレビ局は同氏の犯罪を暴露すると同時に、BBCやその他の機関は(メディアなどが)隠蔽していたことについて報道した。BBCは何週間にもわたって、自社の報道や、芸能界、他の報道機関についても検証報道を行った。サヴィルが出演した番組は、BBCではもう見られない」。

「しかし、ジャニーが亡くなった後も、日本ではそのようなことは起こらなかった。私たちがBBCのために調査をしていたときも、誰もこの話題に近づこうとしなかった。日本が前進するためには、『なぜこのようなことが起きたのか 』ということをメディア自身が自問自答する必要がある」

「これがスタート」

「日本のメディアの対応は、特にこれだけ多くの被害者が語った後では、十分とは言えない。一部の大手テレビ局などには、このような事態を招いた責任がある。これは始まりに過ぎない」と語るのは、自身も性被害を受け、元TBS記者に対する損害賠償請求で勝訴しているジャーナリストの伊藤詩織さんだ。

「今日、視聴者は変わった。私たちはもう、このような話を無視することはできない。人々は『なぜこの話をもっと早く取り上げなかったのか』とSNSで問いかけている。少しずつだが、性暴力について語られるようになってきたと感じている。これがスタートではないか」

「民主主義は暗闇の中で死ぬ(Democracy Dies in Darkness)」とは、ワシントン・ポスト紙のスローガンである。ジャニーズを取り上げる日本の主要メディアは今こそこの言葉を噛みしべるべきだろう。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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