「井ノ原氏に拍手」に感じた日本メディアのヤバさ 1回目の会見と決定的に違ったポイント

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井ノ原やジャニーズ幹部がこれ以上口にしてはいけない言葉があるとすれば、それは「子ども」ではないだろうか。ジャニーが存命中、井ノ原が自らの子どもをジャニーズに入れたとは思いがたい。

シャルル・ペローの有名な物語『妖精たち』では、妖精が高潔な若い女性に、話すたびに真珠やダイヤモンドを吐き出すという贈り物を与え、悪質な妹には、話すたびにカエルやヘビを吐き出すという苦境を与える。

井ノ原の話を聞いたとき、子どもの頃のこのイメージが脳裏をよぎった。しかし、私がカエルやヘビを見ている間、出席していたメディアは井ノ原の口から真珠やダイヤモンドが出てくるのを見ていた。抗議するどころか、会場は拍手喝采に包まれ、報道の自由を阻む井ノ原と司会者の古典的な手法を支持したのだ。

ジャニーズの新体制

会見で露になった主要メディアの「最悪な部分」

今回の会見は、ジャニーズ事務所の新たな不正や落ち度を明らかにしたものではなかった。今回の会見は日本の主要メディアの最悪な部分を暴露したのだ。つまり、記者たちは生やさしい質問をするだけで国民の知る権利の役に立たないだけでなく、同時に同胞であるはずのジャーナリストが質問しようとしているのを邪魔するのだ。

このパターンは日本の多くの機関や企業でも同じだ。多くの場合、「認定されたジャーナリスト」はほかのジャーナリストとの接触さえもコントロールする。私の経験では、外国人記者が行政機関の記者会見に立ち入ろうとすると、省庁ではなくジャーナリスト(記者クラブ)に許可を求めなければならない。

「性犯罪はプライベートな問題だと思われがちだが、性犯罪は多くの人の精神衛生にもかかわる大きな問題だ。性犯罪は権力の乱用があるところでは必ず起きる」と、フランスで性犯罪について長く取材してきた記者、マリーヌ・トゥルチ(メディアパート)は強調する。

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