「井ノ原氏に拍手」に感じた日本メディアのヤバさ 1回目の会見と決定的に違ったポイント

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民主主義が機能していれば、司会者はジャーナリストをそんなふうに扱う勇気はないだろう。会社側は厳しい記者にこそ質問をさせ、ジャーナリスト仲間たちもこれに加担したはずだ。もし、それが行われなければ、ジャーナリズム協会が会見後に事務所に抗議するだろう。

菅義偉の記者会見では、望月に質問する機会を与えていた。中国外務省による記者会見でさえ、不愉快な質問に対してオープンだ。

あろうことか、記者が記者の質問を遮った

だが2日、「ジャニーズの国」では、主要メディアは厳しい質問を受けないというジャニーズの姿勢を支持した。そもそも会見に参加しながら質問もないような、年配の男性記者たちが、2人の記者を怒鳴りつけ、黙らせようとさえしていた。

結局、2人の記者はマイクなしで、直接質問するよりほかなかった。確かに会社側が決めたルールは逸脱していたのだろう。そこで、井ノ原が行ったのが、自分の子どもを含めた子どもたちを盾にすることだった。

「この会見は全国に伝わっておりまして、子どもたちも見ている。(性加害)被害者の皆さんには、自分たちのことでこんなにもめているんだと思ってほしくない」。「ルールを守る大人たちの姿を見せたい。どうか、どうかお願いします」。

井ノ原が守るべきは、会社が決めたルールよりも子どもたちだったはずだ。しかし、このとき、井ノ原は、ジャーナリストを黙らせるために、あるいは会社の想定したとおりに会見を進行させるために、「子ども」を利用した。

何十年もの間、井ノ原とジャニーズ事務所の幹部たちが最も遵守してきた "ルール"は「オメルタ(マフィアによる沈黙の掟)」だった。創業者が何百人もの子どもやティーンエイジャーに性加害を行っていたのを、「うわさでは聞いたことがある」として、それを知ろうとすることを避けてきた。

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