ソニーはなぜハッカーに狙われたのか、「アノニマス」の正体

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 米国政府の外交公電や米軍の機密情報を次々と暴露したウィキリークスに対し、大手銀行のバンク・オブ・アメリカやネット決済最大手のペイパル、アマゾンなどが、口座凍結やサーバー貸し出しサービス中止などといった取引停止措置を講じた。「言論の自由」という点でウィキリークスに大いに共鳴するアノニマスは、これらの企業に次々とサイバー攻撃を仕掛け、アマゾン以外のシステムを軒並みダウンさせている。

米国政府などから激しい批判を受けつつも、ウィキリークスは今や米ニューヨーク・タイムズ、英ガーディアン、朝日新聞社などと連携して告発内容を検証することで、社会的地位を得ている。そのウィキリークスの守護兵を務めたのが、アノニマスだった。

11年に入り北アフリカ諸国で続発した民主化運動でも、アノニマスは大きな役割を果たした。エジプトでは、ムバラク政権が国民に対して検閲や宗教の自由の抑圧などを行っていると非難し、動画などを使った政府批判キャンペーンを展開した。反政府デモの情報拡散を阻止しようとエジプト政府が国内のネット接続を遮断したのに対抗し、アノニマスは猛烈なDDoS攻撃で反撃。政府関連サイトをダウンさせた。反政府運動家のコミュニケーションツールとなったフェイスブック、ツイッターと同様、独裁政権崩壊の一助となったというある程度の評価を受けている。

コントロール不能な「変革力」の末路

インターネットへのアクセスを持つ者ならば誰でも発言し、変化を起こすパワーを手にできる--。米グーグルのエリック・シュミット会長は『フォーリンアフェアーズ』(10年11~12月号)に発表した論文で、グローバル社会の変化をそう読み解いた。アノニマスがこの言葉どおり、現実の政治・経済に影響を及ぼしたのは事実だ。ただ、その力と結果はアノニマス自身でさえコントロールできない危ういものである。

情報流出やPSNの停止を受け、アノニマスのブログやフェイスブックには「情報を返せ」といったゲームファンらからの非難の書き込みが殺到した。5月10日ごろからはアノニマスの中心メンバーのIPアドレスや携帯電話番号などの情報がブログでさらされ、内部抗争が起こったことが判明している。

一部の中心メンバーは「ソニーの計画はやりたくなかった」とも漏らしている。だが所詮、アノニマスにとってソニーへの攻撃は無数にある計画の一つにすぎない。そしてまた新たな獲物を探し求めて、ネット内を徘徊しているのだ。

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(杉本りうこ =週刊東洋経済2011年5月28日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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