ソニーはなぜハッカーに狙われたのか、「アノニマス」の正体
これに対しソニーはホッツ氏らをデジタルミレニアム著作権法違反で米連邦地裁に提訴。2月16日にはルートキーを使ったユーザーにPSNへのアクセスを制限するとブログで警告した。3月上旬にはホッツ氏のブログなどにアクセスしたユーザーの情報開示を連邦地裁に請求した。
ソニーに限らずゲーム機やスマートフォンのメーカーは、基本的に端末の改造を認めていない。たとえば任天堂は改造ツールを製造・販売した業者を各国で提訴し、一部で販売差し止めを勝ち取っている。海賊版ソフトの利用を防ぎ、知的財産権とビジネスモデルを守るためだ。
ただ、そうした情報にアクセスしようとした一般のユーザーまでを相手に、彼らのネット接続の自由に踏み込んだのはソニーだけだ。ここに「ネットと表現の自由を脅かす対象への徹底攻撃」をモットーとするアノニマスがかみついた。
アノニマスの参加者は世界で数千人とされ、常時複数の攻撃計画が進行している。世界最大のSNSであるフェイスブックや、ロシアやインドのサーバー上に開設したチャットなど情報共有サイトを管理する中核メンバーは数人いるが、個々の計画では指令系統はない。
昨春からアノニマスのチャットに参加している首都圏在住の日本人男性は、「“集団”という表現は正しくない。匿名の参加者同士の結び付きは非常に緩やかで、2ちゃんねるに似た“コミュニティ”と言うべき。ネットの自由に共鳴するという旗印があるのが2ちゃんとの違いにすぎない」と語る。
計画はその是非や影響が吟味されるのではなく、多くのネチズンの関心を集め参加者を増やした「人気作」が威力を発揮し、不人気なら廃れていく仕組みだ。東日本大震災後の3月下旬には、東京電力など原発関連企業をターゲットとする計画が浮上し、実際にDDoS攻撃も行われたとされるが、参加人数は限定的で、大きな混乱には至らなかった。
一方、ソニーに対する計画には最大で4000人もが賛同し、DDoS攻撃やソニーストアでの座り込み抗議に参加したとされる。それだけソニーに不満を感じるネチズンがいたともいえるが、「本当に義憤を感じている人もいるが、お祭り騒ぎに便乗するだけの人、計画にない悪質なたくらみを隠し持つ人もいる。それらを区別できないのがアノニマス」(前述の参加者)。