ダイハツの軽「ムーヴキャンバス」発売1年通信簿 軽ハイトワゴンでムーヴが選ばれる理由とは

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ムーヴキャンバスのシート
ムーヴキャンバスのシート(写真:ダイハツ工業)

一方、ダイハツは、車種を問わず、今日もなお電動化を採り入れた車種は販売していない。その間に、日産自動車と三菱自動車からは、電気自動車(EV)のサクラとeKクロスEVが登場した。

一般に、ハイブリッド車を含め電動化は、二酸化炭素の排出量を減らす環境対応策だと考えられている。その観点だけであれば、ダイハツは、ガソリンエンジン車の燃費を大きく改善する「ミライース」を2011年に発売した。それは画期的軽自動車ではあったが、電動化の価値は単なる燃費向上や脱二酸化炭素だけではない。

マイルドハイブリッドでさえ、停車中のアイドリングストップからの発進で、モーター駆動による力強さと静粛性を手に入れることができる。さらにスズキは、アイドリングストップ効果を最大に活かすため、エコクールという空調機能も採り入れている。これは必ずしもカタログの燃費数値に関わらないかもしれないが、停車中のガソリン消費という無駄と環境負荷を実走行のなかで抑え、環境性能をより前進させることに効果がある。それでいて、夏の冷房を使い続けることができ、車内は快適だ。

さらに、モーター駆動が加わることで、静粛性が大幅に向上し、直列3気筒エンジンによる不快な振動も抑えることができる。この振動と騒音の改善は、ムーヴキャンバスのような個性豊かで上質な軽自動車という価値を、より一層高めることができるはずだ。しかし、電動化を単なる環境対策としてしか理解できなければ、静かな上質さという付加価値を見落としてしまうのである。

電動化が遅れるダイハツに一抹の不安

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現状、ムーヴキャンバスが初代の実績を損なわない販売動向であることは喜ばしい。しかし、サクラとeKクロスEVが1年で5万台を超える販売を実現した今、電動化に手をこまぬいていると、逆転現象が起き、のちのち挽回に手間取る可能性は否定できないと思う。もはや軽自動車の枠を超えたと実感させるサクラは、「ゲームチェンジャーになる」ことを商品開発の狙いとしているからだ。

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御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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