高いiPhone、高いホテルと「半世紀ぶり円安」の先 実質実効レートの調整経路は円高かインフレか

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程度の差こそあれ、同様の事象は輸入されてくる高級時計、外車、食材、酒などにも起きている。日々目にする飲食店の値上げは人手不足を背景とする人件費高騰も大きいだろうが、輸入されてくる燃料や食材・飲料などが値上がりしていることに起因するだろう。

文字通り、「インフレの輸入」は進んでいる。

円建て輸入価格の水準は高止まり

円建て輸入物価は、変化率で見れば伸びが落ち着いているが、水準は高止まりしており、これが順次、日常生活に転嫁されているのが現在の局面とみられる。足元、円安と原油高の並走が再び始まっていることを思えば、円建て輸入物価の水準はここからさらに盛り返してくる可能性が高い。

円建て輸入物価指数の推移

以上のような円安の論点は、多くの人々が体感する実情と一致するだろう。一方、もう1つの論点であるインバウンド(外国人旅行客)需要にまつわる「インフレの輸入」は、これから体感する人が多くなる話である。

インバウンド需要は統計上、旅行というサービスを「輸出」し、そこから得られる外貨(旅行収支黒字)が増加、結果としてサービス収支、ひいては経常収支の黒字を増やす構図になる。

しかし、旅行輸出が増加する以上、大挙するインバウンドの消費・投資意欲に近い財・サービスから値上げが行われるという事象も避けられないことである。そうした状況が極まっていけば、結果として日本の一般物価が押し上げられていく経路も想像される。

例えば、インバウンドに最も近い産業は宿泊・飲食サービスだ。

2023年9月3日の日本経済新聞は「都心ホテル、料金急上昇 パレスホテル10万円突破 高価格帯、伸びNY超え」と題し、都心のホテル料金急騰を報じていた。ここでは都内の高価格帯ホテルの平均客室単価(ADR)が上昇率でニューヨークを上回り、東京・大手町にあるパレスホテル東京のADRが海外の高級ホテルの目安とされる10万円を初めて超えたことが取り沙汰されていた。

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