ジャニーズ「新会社の社名公募」ただの悪手な理由 ファンを巻き込むことは「諸刃の剣」だ
こうした背景もあって、新社名が、それ単体で固有名詞として認識されるまでには、それなりの時間を要すると考えている。看板を掛け替え、どれだけ「中の人」が気持ちを切り替えたとしても、世間からの認識までも変えることは難しい。
あまりに遅すぎた発表
以上の理由から、悪手にしか思えない「ネーミング公募」。たとえ、それしか道がなかったとしても、その発表はあまりに遅すぎた。東山氏の就任発表時に、すぐ変えると宣言していれば、おそらく印象は変わっていただろう。
就任会見後、民放テレビ各社などからは、社名変更を求める声が続々と上がった。もし「外圧で変えざるをえなかった」と思わせる余地を残せば、すぐさま「一貫性や誠実さのない新体制だ」と消極的な印象を残してしまい、「『ジャニー』の4文字さえ削ればいいと思っているのでは」といった疑念を招いてしまう。
もうすでに機を逸してしまっているのかもしれないと思いつつ、社名変更ではイメージが変えられないとなれば、いっそ株式上場を目指していたらよかったのかもしれない……と筆者は考えている(もちろん、東証がそれを許すかは別の話ではあるが)。
いまジャニーズ事務所に求められているのは、「創業家資本からの脱却」と「コンプライアンス意識の向上」、そして「運営の透明性確保」だ。これらを実現するためには、やはり市場の目にさらされるのがベストに思えるのだ。
ジャニーズ事務所は今後、被害者への補償会社と、マネジメント新会社の2社体制に再編される。仮に当面テレビやCM出演が難しくなったとしても、ファンクラブ収益やツアー、舞台の売り上げはそれなりに計算できるはずだ。また近年はYouTubeや映像配信などにも、活躍の場が広がりつつあり、収益化できる場も少なくない。
被害者救済に一定のメドがついたところで、新会社の上場と、補償会社の清算をセットにできれば、復活のストーリーとしても見栄えがする。ファンコミュニティーを「推しの株主になれる場」にできれば、新たなエンタメビジネスにもつながりそうだ。
もちろん現時点で「上場を目指します!」と宣言しても、「まずは被害者補償が先だろ」「舌の根の乾かぬうちに、なにを言っているんだ」となりそうだが、長期的なビジョンとして持っていてもいいのではないか。
このところのジャニーズ批判が生まれる背景には、事務所が「人ごとのような雰囲気」を漂わせていることにある。初動が遅れ、抜本的改革(と人々が納得するような取り組み)は示されず、どこか行き当たりばったりのように感じさせ、当事者意識がないと判断されてしまう。イメージでなんぼの商売をしていたにもかかわらず、看板とも言える社名を公募してしまえば、「ブランドすら他人任せか」となる——。この主体性なきスパイラルを抜け出すことができれば、未来が見えてくるだろう。
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