今後「PBR1倍超」企業も株価上昇が期待できるワケ 改革に消極的な企業は来夏までに追いこまれる
ここで、東証は中長期的な企業価値向上に向けては、全上場企業の約半数がPBR1倍割れにある状況にメスをいれない限り、市場再編に意味がない、と訴えた。
東証の「本気度」はどの程度企業に伝わったのか
この時点ではマーケット参加者は、東証の姿勢を半信半疑に受け止めていただろう。だが私は「PBR1倍割れ企業は失格」と烙印を押し、上場廃止を迫る東証に改革の本気度を感じた。
上記の東証の論点整理を私なりにまとめると、以下のようになる。東証は「大半の上場企業の経営者が資本コストや株価を意識しておらず、意識改革やリテラシー向上が必要」としたが、要はほとんどの上場会社の社長・経営陣は失格とみなしたのである。そのうえで、子供の宿題のように強制的に「資本コストや株価に対する意識改革・リテラシー向上」について取り組みを開示させ、改善させるしかないと腹をくくったと感じた。
結局、この論点整理は3月31日に東証上場部から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」という形で出され、正式に「東証の改革要請」となった。
表向きには「お願い」という形をとったが、この効果は直近までのバリュー相場(低PBR銘柄が相対的に買われる相場)継続が示すとおり、てきめんだった。低PBR企業はこぞって自己株買いに走り、商社、銀行、鉄鋼、不動産、自動車などの株価が大きく上昇している。
東証は、資料の中で、意識の低い経営陣にもキレることなく「最低でもROE(自己資本利益率)8%をクリアしないとPBR1倍になりませんよ」などと数値を明示して優しく教え、そのために意識改革が必要だと説いている。またPBR1倍を割れている企業に対しては「自社の現状について、分析・評価をすべき」というように、宿題を出している。こうした懇切丁寧な指導ぶりを見て、私などは泣きそうになったくらいだ。
一方で、東証は「上級クラス」であるPBR1倍超の企業についても、さらなる評価の向上に向けて目標設定を促している。「1倍超くらいの水準では、世界レベルでは全然ダメ。模範になるような企業が怠けていると全体のレベルが上がらないからあなたたちももっと評価が上がるように現状分析や評価をしてほしい」というわけだ。
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