中国依存からの脱却を図る「韓国」新たな対日姿勢 「ホワイト国」復帰に見る日韓の地経学的攻防

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韓国では独立以来、反日教育がされています。冷戦中は日本の支援を必要としていたので日韓友好を守り、歴史カードを切ることはありませんでしたが、冷戦後の親中派政権は反日政策として歴史カードを切ることが増えました。

日本は「輸出規制」で韓国に対抗する

こうした韓国の攻撃に対し、日本は「経済」のカードを切ります。

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文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2018年10月、韓国の大法院(最高裁判所)は、元徴用工問題をめぐり日本企業に対する賠償命令の判決を下しました。すると日本政府は2019年7月、半導体素材のフッ化水素とフッ化ポリイミド、EUVレジストの韓国への輸出を規制しました。

韓国には、半導体分野で世界1位のサムスンと3位のSKハイニックスがありますが、その部品や素材の多くは日本に依存しています。日本政府は韓国のチョーク・ポイントを研究したうえで、半導体の3素材を狙い撃ちにしました。

さらに同年8月には、輸出手続きを簡素化できる、いわゆる「ホワイト国」(グループA)から韓国を除外しました。韓国はこれに反発し、日本を「ホワイト国」から外し、さらに、日本の輸出規制について世界貿易機関(WTO)に提訴しました。

こうして日韓は地経学的な攻防を繰り広げましたが、尹錫悦政権のもとで両国は歩みよりをはじめています。韓国はWTOへの提訴を取り下げ、日本をホワイト国に復帰させました。これに対し日本政府は、3素材の輸出規制を廃止し、韓国をホワイト国(グループA)に復帰させました。

チョーク・ポイントを狙った日本の地経学的戦略は、一定の効果を発揮したといえます。今後の日韓関係にも生かされる戦略と考えられます。

沢辺 有司 フリーライター

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さわべ ゆうじ / Yuji Sawabe

フリーライター。横浜国立大学教育学部総合芸術学科卒業。在学中、アート・映画への哲学・思想的なアプローチを学ぶ。編集プロダクション勤務を経て渡仏。パリで思索に耽る一方、アート、旅、歴史、語学を中心に書籍、雑誌の執筆・編集に携わる。パリのカルチエ散歩マガジン『pi´eton(ぴえとん)』主宰。

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