盗難から12年半、韓国から返還が決まった後も続くドタバタ劇 あの「対馬の仏像」がたどった"思いもよらない運命"

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盗難から12年半が経ち、ようやく対馬への返還が決まった「観世音菩薩坐像」(写真:筆者撮影)

首都ソウルから車で約2時間。韓国西部、瑞山市にある浮石寺(プソクサ)の本堂に入ると、果物や花などでにぎにぎしく彩られた台座の上の「観世音菩薩坐像」が見えた。そう、2012年10月に対馬の観音寺から盗まれ、韓国に持ち込まれた、あの仏像だ。

5月に観音寺へ12年半ぶりに返されることが決まり、現在は浮石寺に貸与され、5月5日まで100日間の法要が行われている。訪れたのが日曜日ということもあり、浮石寺の本堂には続々と人が入ってきた。受付にいた女性は、同行していた韓国人の友人にこんなふうに話しかけてきた。

「宝冠もあったのに、倭寇に略奪されたときに取れてしまったのでしょうねえ。でも、穏やかで美しいお顔でしょう。お寺に来たときには涙がこぼれました」

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諦めきれない韓国側の気持ち

仏像に近づいて観ていると、筆者のほうも見ながら、「せっかく戻ってきたのに、また日本に行かなきゃいけないなんて……。送り出すときも泣くと思います」と話した。

受付に置かれたパンフレットには「647年ぶりの帰郷〜!!! 必ずや故郷に」と書かれてある。芳名記帳と同時に行われていたのは、「再返還」への署名だった。

「えっ」と驚いていると、受付にいた別の女性は「これから先、また(浮石寺への)返還を求めるときが来るかもしれないでしょう。だから、今から署名活動をしている」と言う。韓国の最高裁判所で浮石寺の所有とは認められなかったが、何かのタイミングで返還運動ができるかもしれないという、諦めきれない気持ちが伝わってきた。

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