盗難から12年半、韓国から返還が決まった後も続くドタバタ劇 あの「対馬の仏像」がたどった"思いもよらない運命"
そして、「観世音菩薩坐像」の窃盗犯の1人は出所した後、「また文化財を狙おう」と話を持ちかけ、仲間を探していたという(韓国の古美術商の話)。
文化財の窃盗品は闇で取引・転売され、時効になるまで行方不明となる確率が高い。韓国では、日本にある朝鮮半島由来の文化遺産についての調査が継続して行われている。窃盗犯の手に渡らぬよう、「観世音菩薩坐像」の対馬への帰還をきっかけに、日韓でさらに文化財の情報を共有し、徹底して管理し、その情報をつねに交換し確認していく必要があるだろう。
信頼関係は構築できるか
3月末、対馬を訪れた浮石寺側から、仏像のレプリカを製作したいという申し入れがあった。観音寺側は、仏像が日本に戻った後に再度の話し合いを持つことを提案している。
しかし、韓国のアートコマースプラットフォーム会社が韓国の「文化遺産回復財団」と協力し、3Dプリンティング技術により仏像のミニチュア版を製作。それをリワードとしたクラウドファンディングを4月5日から5月16日までの期間で始めている。
集まった募金は製作費や製品開発、そして「文化遺産回復財団」が5月24日にオープン予定の「還収文化遺産記念博物館」の準備にも使われるとある。同財団の理事長を務めるのは、浮石寺側で仏像を韓国へ返還させようという運動の中心人物だ。
浮石寺での100日の法要が終わる5月5日以降、連休明けにも観音寺から田中前住職らが訪韓し、仏像と共に対馬に戻る予定としていた。だが、浮石寺側との日程調整はいまだ進んでいない(4月17日時点)。
田中前住職が話した「思いもよらない信頼関係」の構築は、仏像が対馬に戻ってからしか始まらない。仏像は対馬に戻った後、観音寺で法要を行い、その後は「対馬博物館」で保管し、展示される予定になっている。「大切な仏像を守るために」観音寺の檀家の総意で決定したという。
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