「作る→守る」改修ラッシュで変わる高速道路観 目立つ改修・リニューアル工事が意味すること

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すでに建設現場は慢性的な人手不足だといわれるが、特殊な職人技をどのように継承していくのか。そこにも、関心と危惧を抱かざるを得なかった。

高度成長期に造られたもう1つの大規模な交通インフラとして、東海道新幹線がある。

雨の中を走る東海道新幹線(写真:ユキユキ / PIXTA)
雨の中を走る東海道新幹線(写真:ユキユキ / PIXTA)

今年8月中旬には、静岡県内の豪雨で2日にまたがって大きくダイヤが乱れ、お盆明け直後の足に大きな影響を及ぼした。

また、9月15日の夕方、今度は神奈川県内の豪雨で再び1時間ほど運転を見合わせたが、それだけで「のぞみ」の停車各駅は大混雑となった。

東海道新幹線は盛り土区間が多く、雨量による規制があとに造られた新幹線より厳しい。今後、さらに異常気象が増加することを考えると、2024年に開業60年を迎える東海道新幹線の抜本的なリニューアルも、考えなくてはいけないだろう。

東名や名神は「複線化」が進むが……

ヨーロッパなど海外で運転する機会も多い筆者は、アウトバーンで知られるドイツでも、よく道路の改修区間を通ることがある。

日本であれば、片側2車線や3車線のうち1車線を通行止めにして工事をすることが多いが、ドイツでは車線の幅を少しずつ縮めて、車線の数(通行帯)を減らさずに工事を行う場面によく遭遇した。渋滞を極力、発生させない交通整理の仕方である。

日本よりも道路幅に余裕があるからできる芸当のように思うが、それでも隣の巨大なトレーラーと接触しそうなほどの至近距離で走る際には、かなり肝を冷やした。

対向車線の工事で一車線減っても路肩も利用して3車線確保しているドイツの高速道路(筆者撮影)
対向車線の工事で一車線減っても路肩も利用して3車線確保しているドイツの高速道路(筆者撮影)

また、もう少し視野を広げてみると、通行車両の多い区間には、少し離れて別の高速道路が並行して設けられていることも多い。どこかを通行止めにしても、並行する高速道路に迂回させることで、交通の分断を防ぐのだ。

日本でも東名や名神では、「複線化」が進んでいるが、災害時や大規模工事の際の別ルートを確保する「リダンダンシー(冗長性)」の考えは、老朽化の進行や災害の多発化を考えると、ますます必要になってくるようにも感じる。

「作る時代」から「守る時代」へ。高速道路のリニューアル工事のニュースは、改めて私たちが新たな時代に入ったことを感じさせてくれる。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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