この大師橋の架け替えの一部始終を記録した番組が9月18日(月)、NHK総合テレビで放送された。番組名は、『解体キングダム』。
この番組は、普段見ることができないビルなどの解体現場に潜入し、特殊な技術を持つ職人技に迫るものだ。2020年から不定期で放送されていたが、今年4月から週1回のレギュラー番組に「昇格」している。
9月18日の放送は、いつもより長い72分のスペシャルバージョンで、大師橋の架け替えの全貌を、100台ものカメラを据えて見せてくれていた。
この工事の特徴は長さ300m、重さ4000トンもの巨大な橋梁をわずか2週間でそっくり入れ替えるという工事期間、つまり通行止め期間の驚異的な短さにある。
そのため、既存の橋の隣に橋脚を建てるとともに、別の場所で橋げたを建造し、現地に船で運搬。橋脚に乗せたあと、既存の橋と新造の橋の2つを同時にスライドさせて、橋を丸ごと入れ替えるという工法が採られた。
超重量級の橋をスムースに滑らせるために、スライドレールと呼ばれる部分にはステンレス、その上を滑る橋脚の乗った箱型の「シップ」と呼ばれる器具には、テフロン板と呼ばれるフッ素樹脂を使って極限まで摩擦係数を減らすなど興味深い工夫が満載で、72分の番組の大半はこの橋のスライドのシーンに焦点が当てられていた。
増えゆく大規模リニューアルへの課題
この番組を視聴して感じたことは2つ。1つは、高速道路に限らず、高度成長期に建設され、解体・大改修が必要となる施設が日本中にあるに違いない、ということ。だからこそ、『解体キングダム』という番組が週1のレギュラーで成り立つわけである。
伝統的な木造家屋の解体ならそれほど手間や時間を要さないが、コンクリートでできた建造物の解体や建て替えがいかに大変かを、改めて考えさせられる。
もう1つは、こうした特殊なワザを持つ職人が、今後どんどん減っていくであろうこと。
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