Netflix日本コンテンツ、世界席巻へ周到な仕掛け 日本トップの坂本和隆氏が語る参入からの8年

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この8年間で、当時予想してたよりもうまくいかなかったことを一つ挙げるとしたら何ですか?

坂本:特にスタートの段階で、日本の実写ドラマの可能性を理解してもらうのに時間がかかったことですね。当時は、「日本にそもそも海外で見られる作品がどれぐらいあるんだ?」という実績ベースでの議論になってしまうと、やはりしっかりした投資を確保するのが難しい時期が続きました。

どういうふうに、ここから自分たちの色というか、Netflixならではの作品を出していくのかというところに注力して作っていくプロセスに、どうしても3年ぐらいかかりましたね。

その流れでようやく出せたのが『全裸監督』でした。作品の開発からその制作過程含めて、配信までは本当に時間がかかりました。ただ、大変だった分、あそこが一つのゲームチェンジのポイントになった気はしています。

Netflix
Netflixで日本コンテンツを統括する坂本和隆氏(左)とインタビュアーの徳力基彦氏

『全裸監督』で流れが変わる

『全裸監督』でNetflixの印象が大きく変わった感じはありますよね。どこにでもある番組を配信する「動画配信サービス」ではないんだという。逆に、思ったよりうまくいったことはなんですか?

坂本:やはり『全裸監督』以降の流れで、その後の自分たちが関わった日本の作品が世界中でみられていく勢いというのは、想像を超えていましたね。特に『今際の国のアリス』シーズン2が、90カ国以上でトップ10入りしたのは本当に嬉しかったですし、『First Love 初恋』や『サンクチュアリ -聖域-』も本当に多くの人に観ていただきました。

さらに直近のゲームチェンジ事例で言うと、やはり実写版『ONE PIECE』ですね。

特にマンガベースの実写化をアメリカで作ったものって、まだ5つぐらいしかないんですね。それが、やはり『ONE PIECE』という日本でも最も大きなIPの一つで、Netflixでも初めて社内の中で日米含めたタッグを組んだ作品で、これだけの結果を出せたのは本当に嬉しいです。

実写版『ONE PIECE』はハリウッドのチームだけでなく、日本側のチームも一緒に動いていたんですね。

坂本:例えば、ハリウッドの中でのストーリーテリングのメソッドだと、一般的には主人公のキャラクターが大きく強く成長していく過程が必ず必要だと考えられているんです。

一方で、『ONE PIECE』ではルフィは最初から強くて、ルフィの影響で周りがどんどん変わっていくという、ハリウッド的な王道とは違う尾田先生ならではのキャラクターの行動原理があります。そういう違いをNetflixの制作チームが、どういう風に理解するかっていう過程がとても大切だったんです。

『ONE PIECE』は本当にたくさんのコアなファンの方がいて、実はファンの方って、7割ぐらいは別に実写は見たくないという思いもあったりするんですよね。

だからこそ、マンガ原作のDNAを深く理解するというところに注力して、この作品を通してNetflixに2億3000万世帯以上の方がいる中で、コアファンはもちろんですが、特に初めて『ONE PIECE』に触れる人を増やすことを目指しました。

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