単なる漫画アニメの実写版に終わらせていないのは、共同製作総指揮を務めたスティーブン・マエダが海外ヒットドラマの「X-ファイル」や「LOST」、「CSI:マイアミ」などの脚本やプロデュースを手がけてきた人物であることも影響していそうです。また、このマエダと共に製作総指揮に挑んだマット・オーウェンズはもともと原作のファンだったことを明かしています。かつてオーウェンズはうつ病を患っていたそうで、「人が人を思いやり、夢を追いかけ、家族を見つけることを気づかせてくれたのが『ONE PIECE』だった」と語っています。個人的にも作品への思い入れが強く、作品の本質を理解するオーウェンズも実写版の質の底上げに貢献した人物の1人でしょう。
Netflixにとっても挑戦作だった
原作は、世界61カ国で5億部以上の累計発行部数を誇る漫画シリーズですから、世界中の原作ファンも納得できる実写版を目指すことが必須条件にあったことは容易に想像できます。「失敗は許されない」ということが決して大袈裟ではなかったのかもしれません。
アメリカ大手の製作プロダクションであるトゥモロー・スタジオを中心に実写版プロジェクトの計画を2017年から始め、年月も十分に費やしています。その過程のなかで、作者の尾田氏自ら実写版の共同エグゼクティブ・プロデューサーを務めることになり、集英社も製作協力する体制が組まれています。
十分な予算を投じ、製作体制にも抜かりなく、質も追求した根底には、挑戦作という意識があったからでしょう。原作の力を借りれば、ヒットして当然の作品ではなかったのかもしれません。その意識は、投資し、日米の製作体制を固めたNetflixも持っていたはず。
これまでNetflixで高い視聴数を記録した作品にはシーズンを重ねる「ストレンジャー・シングス」をはじめ、韓国発の「イカゲーム」に、アダムスファミリーを完全アレンジした「ウェンズデー」、そして実在した連続殺人犯を扱った「ダーマー: モンスター: ジェフリー・ダーマーの物語」などが挙げられます。Netflixが得意とするダーク要素が強めの作品が並んでいることは一目瞭然です。Netflixから発掘された独自のストーリーという共通項もあります。
そんななか、実写の「ONE PIECE」は、これまでのNetflixヒット作とは毛色が異なります。Netflixにとっても、漫画アニメ原作の実写化の成功例を作ることは1つの挑戦にあったに違いありません。シーズン2が予定されていることが早くも発表されたところですが、話題性を超えて、今後、どこまで数字が伸ばしていくかが、本当の勝負どころでもあります。一般のドラマファンにも壮大な世界観を持つ作品であることを気づかせた時、歴代のヒット作に並んでいくのではないでしょうか。
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