実現するには十分な製作費を投下することが必要です。実際に実写版「ONE PIECE」は、世界ヒットを確実に狙う選ばれた作品だけが1話あたり1000万ドル(約14億円)以上の予算を獲得できるように、高額予算作品であることは確かです。公式が発表している金額ではありませんが、海外メディアの一部が報じた数字によると、1話あたりの製作費は1800万ドル(約26億円)に上ります。
ルフィがゴム人間であることに、なんら違和感を覚えないほどの最新技術を駆使し、海賊船「ゴーイング・メリー号」や海上レストラン「バラティエ」など舞台セットも精度が高く、こうした見栄えのクオリティーの高さを裏付けるような製作費が投じられているのです。
原作を忠実に再現しただけではない
一方、高額のギャランティーが発生しそうな役者は登場しません。20歳になったばかりのメキシコ出身の新人俳優イニャキ・ゴドイがルフィを演じ、準主役のナミ(エミリー・ラッド)やウソップ(ジェイコブ・ロメロ)、サンジ(タズ・スカイラー)らを演じる役者たちも少なくとも日本ではあまり知られていません。認知度が高いのはゾロ役の新田真剣佑ぐらいです。海外メディアでは「ソニー千葉(=故・千葉真一)」の息子として紹介されることもあり、アクションについては太鼓判が押されたようなもの。アメリカで生まれ育ったバックグラウンドがあることから言語上の問題もなく、ハマリ役だと思います。
納得のキャスティングですが、漫画やアニメの中で愛されてきたキャラクターを生身の人間が演じる時、原作とのイメージの違いが作品評価の分かれ目となることも多いです。それは避けられない現実と理解したうえで、実写の「ONE PIECE」がキャラクターについても比較的、好印象を持たれているのは演出力が勝っているからだと思います。原作の漫画らしさを忠実に再現することだけにこだわらず、映像作品に欠かせない人間ドラマとしてのクオリティーも保っているのです。
全8話の中で描かれたのは、原作初期のいわゆる「イーストブルー(東の海)編」です。ルフィが信頼できる仲間たちと出会っていく過程と、魚人の海賊アーロンとの死闘を山場にした物語が展開されるなか、ヒロインとしてフォーカスされたナミの人間性をより理解しやすいものにしています。生き方を映し出す感情が画面を通じてストレートに伝わってくるのです。人の演技と映像演出を生かしているからこそ表現できるものだと思います。
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