スターキャンプで痛感「三菱らしさ」維持の難度 変わらぬ業界図式と電動化の中で何をすべきか

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筆者も日頃、個人所有車等を使ってオートキャンプをする機会がある。今回も、自前のカーサイドテントや各種キャンプグッズを持参して、朝霧高原の自然を全身で感じた。

深夜、満天の星空を眺め、午前5時過ぎにあたりが明るくなると、目の前に富士山が姿を現した。車載の1500W給電システムとポータブルバッテリーを使って、朝食の準備を進めるのが実に楽しい。

スターキャンプの運営スタッフの多くは、三菱本社のさまざまな部署の社員だ。会場内の各所で社員の声を拾ってみると、「こうしてお客様と直接ふれあうことが、とても良い刺激になる」という意見が多かった。

メインステージ前に集まっての朝ヨガの様子(筆者撮影)
メインステージ前に集まっての朝ヨガの様子(筆者撮影)

見方を変えると、「普段は顧客との直接的な接点がほとんどない」とも言える。これは三菱に限った話ではなく、自動車メーカー各社における潜在的な課題だ。

「製販分離」という業界図式にある課題

背景にあるのが、「製販分離」である。製造と販売の事業が分かれている業界図式を指す表現だ。

自動車メーカーは、自動車の新車製造と新車卸売り販売が主な事業であり、自動車メーカーにとって直接的な顧客は新車販売会社となる。新車販売会社が個々のユーザーに新車を小売りするのが、自動車産業界の基本構図である。

一般ユーザーにとっては、新車購入時に自宅近くの新車販売店に出向いて営業担当者と商談をする際、商談相手が自動車メーカーではなく小売り事業者だという意識を持つことはほとんどないだろう。

富士山を背景に、三菱社員とユーザーのコミュニケーションが各所で見られた(筆者撮影)
富士山を背景に、三菱社員とユーザーのコミュニケーションが各所で見られた(筆者撮影)

自動車メーカーのホームページや商品カタログで、開発担当者による商品説明などを見ることはあっても、ユーザーが直接、自動車メーカーの社員と接する機会はほとんどない。

今回、スターキャンプに参加した三菱本社の販売関係部署の社員も「ユーザーが、実際に三菱車をどうやって使っているのかがよくわかった」という表現を使うほど、自動車メーカーとユーザーとの距離が遠いのが実情だ。

そうした中で、スターキャンプのようにアウトドアを切り口とすると、「クルマを使ったライフスタイル」という観点で、自動車メーカー、新車販売店、そしてユーザーが直接つながりやすくなる。

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