トリリンガルを目指す日本人一家の旅 マレーシア母子移住13年の冒険記

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2007年10月、キャメロンハイランドへ旅行したときのスナップ

2010年、台湾学校の中学を卒業後、長女の「また英語教育に戻りたい」という言葉をきっかけにして、長女と長男は英国式のインターナショナルスクールに戻る。 台湾学校が大好きだった次女は、台湾学校に残り、中国語での学習を続けることになった。その後、長女、長男とも、イギリスの統一試験を受け、インターナショナルスクールを無事卒業した。

長女はその後、サンウエイカレッジへ進学し、カナダの大学準備コースを受ける。しかし、結局、大学進学はしないと決めた。「中華系マレーシア人は、大学へ行かず起業することを選ぶ人が多く、長女は友人達の影響を大きく受け、大学へ行くより早く起業したいと言い出しました」

彼女は2013年にカレッジを卒業。しばらくクアラルンプールで働いていたが、仕事の関係で香港に渡った。大好きな香港で将来起業する夢を叶えるため頑張っている。

一方、長男は、マレーシアに分校もあるオーストラリアのモナッシュ大学のエンジニアコースを目指してカレッジのファンデーションコース(基礎科)で勉強中だ。

大澤さんは、「小さい頃から勉強をほとんどしなかったが、日本にアルバイトに行ったのをきっかけに、勉強の大切さに気づき、人が変わったように一生懸命勉強しています」と笑う。次女は現在も台湾学校で勉強中。将来は台湾の大学を目指すという。

「日本に帰ろうと思ったことは一度もない」

13年間、母子4人の生活。日本に帰ろうと思ったことはないのだろうか。

「それが一度もないのです。マレーシアに着いて1週間後、息子が高熱で入院したとき、どうしよう?と思いましたが、不動産屋さんの車で病院まで送ってもらったりして、皆に助けてもらいました。追突事故にあったり、5回引越ししたり、と決して順風満帆ではなかったものの、なんとかやってきました」

大澤さんはマレーシアの情報発信として、「南国マレーシアでめざせトリリンガル」というブログを書いてもいる。そんな大澤さんに13年間のマレーシアでの子育てを総括してもらった。

「トリリンガルになるには子供達はまだまだだと思います。3人とも英語、中国語、日本語は話していますが、得意不得意があります。たとえば、長男は、読むのは日本語、話すのは中国語、書くのは英語がそれぞれ得意なんです。ただ、語学に関してさらに専門的な勉強が必要なら、これから勉強すればいいと思っています。マレーシアの英語は完璧じゃないと非難する人もいますけど、コミュニケーションの手段だと思えば問題ありません。英語だって、英国、オーストラリア、米国で違いますからね。けれど、成人した長女が、『英語、中国が勉強でき、話せてよかった。私はマレーシアに来たことを感謝しているよ』って言ってくれました」

移住ブームになる前の2002年にマレーシアにやってきている。先見の明があると言われることも多いという。

「よく先見の明があるねって言われますが、ただ子供たちの将来のことを考えて、海外に出ました。それぞれの人種や文化を尊重しながら多民族が暮らすマレーシアは、子供たちを育てるのによい環境だと思います。多国籍生徒の中でたくさんの刺激を受けながら学んだことは、これからグローバル社会で生きていく助けになることでしょう。マレーシアと日本、遠距離ながらつねに応援してくれた主人に感謝しています。子供たちが巣立った後もここマレーシアに主人と住みたいです」

野本 響子 ジャーナリスト

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のもと きょうこ / Kyoko Nomoto

東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が『帝国化』する』(ともに松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね!フェイスブック』(朝日新聞出版)、『マレーシアの学校の○と× アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、現在クアラルンプール郊外に長期滞在中。趣味はオーケストラでの楽器演奏。

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