「小児医療」家族の葛藤伝える漫画家の切なる思い 漫画「プラタナスの実」が挑んだ答えのない問い

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東元俊哉(ひがしもと としや):漫画家。1981年生まれ、北海道出身。主な著作に『テセウスの船』(講談社刊/全10巻)がある。『テセウスの船』は、TBS系『日曜劇場』にて2020年1月よりドラマ化された。2020年10月より『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて『プラタナスの実』を連載。

 

東元:お医者さんは親切な方が多く、エネルギッシュで、仕事に対して闘志のようなものを感じました。

患者ご家族の方々にも取材協力をさせていただき、お話をする中で時折涙をこらえていらっしゃる方もいて、お医者さんの中でもそういう方がいて、とにかく心を打たれました。

そういう思いとか、医療の部分できちんと漫画に反映できるか、できてるか。責任を感じていました。

医療の部分でリアリティーを重視したいと思う反面、やればやるほどうそになる気がして、やはりエンタメなので。それなら家族の部分をしっかり描こうと思いました。

この漫画は医療よりもそっちのほうがメインに描かれています。

小児科が抱える課題、実際の医療現場では…

──吾郎が以前経営していた大病院では、小児科をなくすことになりました。小児科が抱える問題として、小児科設置の有無、医師不足、コスト削減、将来性などさまざまな課題があると思います。

小児科独特の空気感があるような気がしますが、東元先生から見て小児科はどのように映りましたか? また、世間が思う小児科医との現実のイメージのギャップはありましたか?

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東元:確かに小児医療にはさまざまな問題や課題があるように思います。でもお話をさせていただいたお医者さん方は、あまり気にしていないように見えました。

「それはそれで仕方ないよね」とニコッと笑ったお医者さんの顔が忘れられません。小児の先生方や従事者の方々は本当に子どもが好きなんだと思います。そうじゃなければ続けられる仕事ではないと思いますね。

──真心と兄の関係について。真心と英樹は医療に関する考え方もかなり違いを感じました。患者に寄り添う真心と、コスパや経営を重んじる英樹。実際の医療現場でも非常によく見られる光景かと思いますが、東元先生がそこに注目した理由、漫画を通して描こうと思われたことや背景について教えてください。(病院以外の社会でもよく見られるような気がします)

東元:兄弟を描こうと最初に決めて、真心のほうが先にできました。真心は天才とか特別に優れた医師ではないのですが、患者思いで優しい医師。僕(親として)の理想の小児科医でもあります。

ですが、現実には真心のようなお医者さんはいないだろうと思います。作中でも英樹が台詞で言いますが「医師も人間」だからです。気分が乗らないときだってあるでしょうし、苦手な患者家族だっているはずです。

でも真心にはそういうのがなくて、天才ではないけれど小児科医の素質を持っています。極端に分けて「真心=患者家族の理想」「英樹=病院の現実」というイメージで描きました。

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