オーストラリア政府「ネコとの戦争」宣言した事情 野良猫は射殺、飼い猫は外出禁止令…

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レッグ教授の調査によれば、野良猫1匹が1年間に殺す哺乳類、鳥類、爬虫類、カエル類は平均748匹なのに対し、飼い猫は平均186匹だ。ただ、飼い猫の居場所は郊外に高密度で集中しているため、飼い猫が郊外で殺す1ヘクタールあたりの動物の総数は、野良猫がブッシュ地帯で殺す数を上回る。

オーストラリアは過去数十年にわたって野良猫問題に取り組み、捕獲・射殺・毒殺プログラムを実施してきたが、飼い猫にも注意が向かうようになってきたのはここ数年にすぎない。

「私たちは、野良猫については長年多くの対策を講じてきたが、5年ほど前のある時点で、飼い猫についても少しずつ議論を始めるべき時が来たと判断した」とレッグ教授は話した。

オーストラリアが迫られる選択

これは、とりわけ猫の飼い主にとってはデリケートな議論だ。「対立を生む議論とせず、またペットについて人々が身構える事態とならないよう、誰もが細心の注意を払った」と教授は述べた。

「私たちの前には選択肢が置かれている。わが国独自の生物多様性を管理・維持するのか、それとも何もせず野良猫たちが暴れ回るままにしておくのか、そのどちらかを選ばなくてはならないということだ」と教授は言った。「それが、私たちが行わなければならない選択だ。その選択を、ペットの飼い主に充分配慮しながら行うことは可能だと思う」。

(執筆:Yan Zhuang記者)
(C)2023 The New York Times

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