僕がひきこもりたちと事業をつくってきた理由 社会にもっと「はみ出したままでOK」な場を
そんなふうに悶々とすごしていたんですが、高校を卒業するすこし前、突然「素直」という言葉が頭から降ってきました。自分の人生を納得のいくものにするためには、自分の感覚に素直であることが大事なのでは、と考えるようになったんです。人に対してカッコつけたり、思ってもいないことを言ったりするのではなく、僕は本当はどう振る舞っていきたいのかを徹底的に考えてみよう、と。自分を演出することをやめたんですね。それ以降は「僕はどうしたいのか」をつねに考えるようになりました。
「元に戻す」は、ただのお節介
――さまざまな事業を手がけるなかで、核になっている思いはなんですか?
「人間という存在の捉えどころのなさや、思い通りにならない複雑さと向き合うのっておもしろい」ということですかね。人間のめんどうくささを問題だと捉えるのではなく、どうおもしろくつき合っていくかだと思っています。
NEET株式会社なんて、この点を凝縮したプロジェクトですね。僕は「はみ出している」、「ズレている」ということが好きなんですよ。溢れ出ているものや、こぼれているものを深掘りしていくと、何かが見つかるような気がするんです。
「こぼれているものをすくい上げてあげたい」、「元に戻してあげたい」というわけではないんです。それはただのお節介だと思います。そうではなくて、はみ出すおもしろさや、はみ出てしまう人間のおかしさ、可愛らしさのようなものをただ感じたい、ということです。
――そんなはみ出し者たちを見てきて、どんなことを感じてきましたか?
みんなプライドが高く、自分の存在意義をすごく求めていると感じます。ひきこもりながらも「自分は特別だ」と言いたがっている。だけど実際何かをしようとすると、うまくいかなくて自己嫌悪に陥ってしまう。それをすごく恐れていますね。失敗したら「自分は特別だ」と言えなくなってしまうから。とはいえ、このまま何もしないでいても、どんどん時間が経って腐っていってしまう、という。そうした葛藤をすごく感じます。
でもそんなはみ出し者たちの不器用さが、言い方は適切ではないかもしれませんが、僕にはとてもおもしろく見えるんです。それに、はみ出し者に光を当てる理由はほかにもあります。現代社会のさまざまな問題に突破口を見つけ出すためのヒントを、はみ出し者たちは持っていると思うんですよ。
社会のレールに乗ってきた人たちがつくってきたルールや常識はある程度の期間、うまく機能します。でも、歴史を見れば永遠に続くものではないですよね。時代を経るごとに新陳代謝が起きなくなって、硬直化していきます。そんなとき、内部からルールを変えるのは難しいです。たとえば学校や不登校の問題にしても、学校に通える人たちが、通いながら不登校について考えるのは簡単ではない。
それにくらべてはみ出している人たちは、はみ出てしまった元の母体に対してつねに敏感で、改革のヒントをたくさん持っています。だから、ブレイクスルーを起こすためには、はみ出し者たちが必要なんです。