三菱「MRJ」開発の難関、型式証明って何だ? 半世紀ぶり国産旅客機の審査担当者に聞く
実機による飛行テストで前提が崩れたら、再び図面・解析段階からやり直す部分も出てくる。「飛行機の開発作業は飛んでからが正念場」と言われるゆえんだが、検査作業も実際に飛んでからが大きなヤマ場を迎える。
――型式証明の難しさは、どういった点にあるのでしょう?
そもそも、旅客機の開発自体が非常に大掛かりで、大変な作業。開発段階では何らかの問題点が次々に出てくる。問題が出るたびに原因を突き止め、必要な改良を行う。そうした行ったり来たりの作業を繰り返しながら、少しずつ開発作業が進んでいく。飛行機の開発とはそういうものだ。
型式証明取得の難しさ、大変さはいろいろある。すべての基準をクリアするためにやるべき試験は多岐にわたり、それだけで膨大な時間と労力を要する。強度や構造、装備品など全部で基準項目は約400項目にも及ぶうえ、証明のための文書も1項目でいくつも必要になる。1つの文書で数百ページになることは珍しくなく、中には1000ページを超える文書もある。
また、装備がハイテク化、複雑化していることも証明を一層困難にしている。今の飛行機はコンピュータ化され、操縦系統をはじめとする多くの装備が電気信号で動く。
たとえば、あるセンサーが故障しても、バックアップ機能が正常に作動するか。1つのシステム上で別々のトラブルが同時に起きた場合でも、飛行を継続できるか。また、事故に至るようなトラブルが同時に発生する可能性はないか。
あらゆるトラブルの組み合わせを想定したうえで対策を講じ、常に飛行の安全性が維持されることを証明しないといけない。こうしたシステムに関わる部分は特に大変な作業だ。
型式証明は機体メーカーのノウハウ
――ボーイングやエアバスなどと違って、三菱航空機は旅客機の型式証明自体が初のチャレンジ。経験がないゆえの苦労も多いようです。
われわれもそうだが、いろいろな部分で大変さを感じていると思う。日本の型式証明審査の基準項目は米国のFAA(連邦航空局)が定めた規定に倣っている。FAAは証明の方法に関する大量のガイドラインを公表しているが、必ずしもすべて事細かく証明の仕方を明記しているわけでもない。
ある基準項目をクリアしようとする際に、どこまで踏みこんで安全性を証明しないといけないのか。ボーイングやエアバスは今までの経験で、その辺りの程度感がよくわかっている。効率よく証明作業を進めていくノウハウを含め、経験のある・ないで大変さの度合いは違ってくる。
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