三菱「MRJ」開発の難関、型式証明って何だ? 半世紀ぶり国産旅客機の審査担当者に聞く
――審査・検査はどのように行われるのですか。
「飛行」「強度」「設計・構造」「動力装置」「装備」など、分野ごとに細かな必要条件が規定されている。「強度」を例に取ると、「制限過重(想定されうる最大荷重)がかかっても有害な残留変形を生じるものであってはならない」など、66項目の要件が課せられている。全分野の要件を足すと400項目ぐらいあるが、1つでも満たせなければ認証は下りない。
基本は解析や試験のデータによる証明。機体メーカーは集めた膨大なデータを使って、各基準への適合性をみずから客観的に証明する必要がある。そうした提出資料を1つ1つチェックするのが、審査する当局側の基本的な仕事だ。
解析の前提条件が妥当かどうかも吟味する。重要な試験には立ち会うし、部品などが図面通りに製造されているか確認するため、製造工程への立ち会い検査も頻繁に行う。
基準適合性を確認するための実際の検査は、機体の開発作業と同時進行で行われる。開発初期段階では材料や試作部品レベルの試験・解析から始まり、コンポーネント(装備品)、それらを組み上げたシステム、最後は全機(実機)レベルといった具合に、開発の進捗とともに検査のステージも進んでいく。
そうやって装備や構造体など各分野の段階ごとの試験を積み上げ、飛行試験による実証をして、ようやくそれぞれの基準項目の証明作業が終わるイメージだ。
検査は飛んでからがヤマ場
――MRJは9~10月の初飛行(飛行試験の開始)を目指しています。
実際の飛行は人命に関わるので、飛行試験を開始するには航空当局による許可が必要になる。三菱航空機は今、飛行試験開始に向けて、試験機の安全確認作業を入念に行っている。その結果を見て、飛行の安全性が基本的に確保されていると判断できれば、飛行前審査会を経て飛行許可が出る。
飛行機の開発は実際に飛んでみないと見えない部分も多い。膨大な飛行データを集め、それを解析して、設計にフィードバックしないといけない。MRJのこれまでの開発作業は「飛行状態ではこうなるはず」という前提に立ったものだった。
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