海外記者がジャニーズ会見に見た日本の「大問題」 日本が陥っている状況が問題を大きくさせた

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ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか。経済的、社会的衰退のために、海外への日本に関する報道が減少し、日本にポジティブな影響を与えてきた「外圧」が減っている今、日本のメディアはこのことを自ら真剣に考えるべきだ。

「ジャニーズ問題」はすべての日本人の問題だ

ジャニーズの物語はすべての人に影響を与えるものであり、それは今やすべての人の責任である。社会にとってこれほど悪質な実績を持つ企業と関係を続けるかどうかは、スポンサー企業の判断に委ねられている。スポンサー企業は、ジャニーズ事務所や、同事務所を支援した企業との関係を完全に断ち切るべきである。

より責任が重いのはテレビ局だ。テレビ局の中には、早々にジャニーズ事務所所属タレントの番組出演について変更する予定がない旨を表明した局もあるが、開いた口が塞がらない。

テレビ局は、ジャニーズと組むことで社会的責任を回避するのをやめるべきだ。テレビ朝日はこれからも『#裸の少年』を放送するつもりなのだろうか。大手テレビ局が、こんなタイトルの番組を放送するのは普通なのだろうか?テレビ朝日のウェブサイトにある「ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組み」が何と空々しいことか。

テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう。

ジャニー喜多川は、残念ながらこの世で最後の異常性癖者ではない。何の検証もしないで、また彼のような人物が現れたとき、メディアはいったいどうやって再発防止を図るつもりなのだろうか。

(敬称略)

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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