記者会見の冒頭、まず私が最初に感じたのは「入念な準備をして、今回の会見に臨んでいる」ということだった。というのも登壇した4名の服装が、見事にコーディネートされていたからだ。
全員、謝罪会見に相応しくグレーのスーツと白いシャツを着ていたが、中央に座る新旧社長は暗い色調で、脇の2名はそれより少し明るい色味だった。この配色で4人が同時に画面に映った場合、自ずと中央の2人が際立つ。
質疑の冒頭でも感心した。司会が質問者を指名するのだが、最初に指名されたのは共産党機関紙「しんぶん赤旗」だったからだ。
もしテレビ局やスポーツ紙の記者が最初に指名されていたら、生中継で見ている視聴者の目にどう映っただろうか。「長年、メディアをコントロールしてきたのではないか」と批判されているジャニーズ事務所だけに「やはり懇意の社を当てている」と、疑念を抱かれたかもしれない。
かといって「反ジャニーズ事務所」を鮮明にしている社の記者を指名すると、生中継の冒頭から「追及の炎」が燃え盛ってしまう。「批判的だが、徹底的でもない」赤旗は絶妙な選択だったのではないか。
最初の指名が「赤旗」だったのは、単なる偶然だったか。それとも狙っていたのかは、定かではない。もし狙ったとしたら、かなり芸が細かい。
会見時間と出席者は無制限
私がもうひとつ感心したのは、ジャニーズ事務所が会見時間と出席者に制限を加えなかったことだ。
一般的に謝罪会見では、時間と出席者に制限を加えることが多い。会見時間を定めれば、自ずと追及の質問数を抑えることができるし、失言の危険も減るからだ。あるいは出席者を記者クラブ加盟社などと制限することで、喧嘩腰の記者の参加を防ぐことができる。
しかし、こうした防衛策が実際に功を奏することはまずない。出席を拒まれた記者、あるいは質問を打ち切られた記者の筆は当然、一段と厳しいものとなるからだ。さらに時間・出席者に制約を加えることで、「逃げた」と記事に書かれることにもなる。追及を避けたつもりが、逆に追及材料を与えることになってしまうのだ。
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