「こんなことを言っていいかどうかわからないけれど、夫が事故で他界したとき、どこかホッとしている自分がいたんです。“ああ、もう顔色をうかがわなくていいんだ”と思って」
ただ、2人の生活が1人になったことで、家に1人でいるのが寂しくなるときもあった。そこで、それまでできなかったことをすべてやってみた。友人と夜の時間を気にせずに食事をして、帰宅する。女同士で観劇に行ったり、旅行に出かけたりする。
「最初は、“自由って素晴らしい”と思っていましたが、そんなことを2年続けると、新鮮味もなくなった。それに、家庭を築いている友人たちは、家族を放ってちょくちょくは出かけられないですし、また1人で過ごす時間が増えていきました」
今度は、自由を持て余すようになった。
「27年間、毎日料理を作る生活をしていたのに、1人だと料理をする気も起こらない。材料を買って作っても食べきれないし。そう考えてみると、家族がいた生活が、だんだんと懐かしくなってきた。結婚も、相手選びさえ間違えなければ、悪いものじゃないなと思うようになったんです」
結婚という制度は悪くはない
そして婚活をスタートさせ、その半年後、2つ年上のみちや(仮名)との再婚を決め、成婚退会していった。
それから1年後。今度は娘のさゆり(27歳、仮名)を連れて、ふたたび筆者を訪ねてきた。「娘の婚活をお願いしたい」とのことだった。さゆりと面談し、入会の手続きを終えると、みなこは現在の夫との1年間を、こう振り返った。
「前の夫は、料理の中に私の髪の毛がたまたま入っていて、それを見つけると、箸をテーブルの上にバンと置いて、もうその日はそれ以上ご飯を食べなかった。虫のいどころが悪い日は、そこからしばらく怒鳴り散らしていました」
今の夫と再婚した当初、料理の中に髪の毛が入っていたことがあったという。気づいた夫は、“あれ?”と髪の毛を手でつまみあげた。
「私、咄嗟に “わっ、怒られる”と思って、心臓をバクバクさせちゃったんです。ところが夫は、それを近くにあったティッシュに包んで捨てて、何事もなかったかのように食事を続けた。もうそれだけで、“この人はなんて優しいんだろう”と思ってしまいました。出会って1年ちょっとですが、夫が怒ったり声を荒らげたりしたのを見たことがないんです」
そして、しみじみと言った。
「前の夫が亡くなったとき、 “自由っていいな”と思ったこともありました。ただ、私は1人でいるよりも、やっぱり結婚という形の中に身を置いておくほうが心地いい。結婚という制度は悪くないものだと思っています。ただ、どういう相手と結婚するかが大切なんですよね」
人生を切り開いていくのは、自分自身。人生を充実させ、楽しんでいくのも自分自身だ。今、婚活を続けている人たちは、志半ばで結婚を諦めることなく、お相手に出会えるまでは続けてほしいなと、仲人である筆者は思っている。
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