米国原発事情【下】 東芝との合弁による「サウス・テキサス・プロジェクト」増設が暗礁に乗り上げた理由

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NRGエナジーのデイビッド・クレイン会長は、2つの新規原発建設の認可獲得について“タイムリーな形”で急に疑念が生じたのは、NRGとしてこのプロジェクトの資金調達にこれ以上関与するのはリスクが大き過ぎるからだ、と述べている。同社はすでに、3億3100万ドルという巨額の資金を投入している。

東芝はNRCの認可をなお求めていく方針だが、実際にそれを進めるには新規の投資家およびパートナーが必要となる。アメリカでは、原発が外国企業に100%所有されることは法律で禁じられているからだ。

このNRG=東芝プロジェクトは、福島原発事故以前から難関に直面していた。このところテキサス州では電力供給に余剰が生じているうえに、米国では技術的なブレイクスルーの後押しによって国内の豊富な天然ガス資源を活用する道が開けてきており、原発にとっては電力供給面での競合相手として存在感を増してきている。


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現に、サンアントニオ市立電力・CPSエナジーは、NRGエナジーの2つの新設原発からの長期購入契約の交渉を中断している。CPSはサウス・テキサス・プロジェクト(STP)ではNRGのパートナーでもあるが、新規のNINAからの電力購入契約に乗り気でないのは、原発以外の供給源からより低廉で電力を購入できるのではないかと踏んでいるからだ。

NRGのクレイン会長は、CPSなど顧客の購入契約の保証がないと、NINAプロジェクトの資金確保は難しい、と言う。このNRG=東芝合弁のNINAプロジェクト停止は、原発業界にとっては大きな打撃だ。米国エネルギー省は、2009年に新設用の連邦融資保証を申請している15原発のうち、4原発を有力候補と指定していたが、なかでもNINAプロジェクトは最大規模のものだ。

NINA以外では、ジョージア州のボーグル(Vogtle)・プロジェクトがあるが、これにも東芝が関係している。メリーランド州のカルバート・クリフス(Calvert Cliffs)・プロジェクトは、米電力卸業者コンステレーション・エナジーとEDF(フランス国営の巨大電力会社)との合弁会社としてスタートした。その原子炉は、世界最大の原子炉企業である仏アレバから供給されることになっている。

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