リアルで4万人を集めた「VRイベント」の成功要因 「観光客が集まる地域」でのアピールが肝か

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VRヘッドセットを装着しなくてもアバターとのコミュニケーションを楽しめたブースは、ひときわ人気だった(筆者撮影)

1つのコンテンツの体験時間が数分というのも、良いバランスだと感じた。企業ブースのスタッフも、初めての人でも安心して体験できるように操作やコンテンツの楽しみ方を端的に、そしてつきっきりでアテンドしていた。

決められた時間のなか、より多くの人に体験してもらうべく回転数重視で短時間の体験コースとしたのかもしれないが、並んでいる人も、テーマパークの人気アトラクションのように長時間待たなくても自分の番が回ってくるメリットがある。

メタバースの中で何が行われているのか。その1つの答えとなったのが、個人ユーザーが集って運営していた「メタバース映画祭」(筆者撮影)

筆者が今まで見てきた限り、従来のVRコンテンツ体験会は10~15分ほどかけて基本操作を習得してもらうケースが多く、肝心のコンテンツにたどり着くまでに時間がかかる。操作が覚えにくいと感じた人は集中力が続かず飽きてしまうし、VRならではの視界に酔ってしまう人も増えてしまう。また同時に体験する人よりスタッフの数が少ない現場も多かった。何かしらのトラブルが起きたり、自分では判断できないことがあっても、スタッフが他の体験者をアテンドしているときはVRヘッドセットをかぶったまま待たなくてはならない。これは不安が募るのというものだ。

バーチャルマーケット2023リアルinアキバで見たものは、誰でもメタバースの世界をすぐ、しかも濃厚に味わえる仕組みとなっていた。VRを知らない観光客でもそのテイストを味見することができるイベント企画・設計だったのではないだろうか。4万人の来場者のうち、半分がVRを知らない人だったとしても、メタバースの外側に向けての情報発信としてはうまく機能したと断言できる。

大規模な観光地以外でも効果が出るか

ここで気になってくるのは、秋葉原、しかも人通りの多いメインストリートの交差点にあるイベントホールでの実施だからこそ4万人も集まったのでは、というところだ。幸いにもベルサール秋葉原というイベントホールの1階はフルオープンなフロアで、道を歩く人からも展示が見えるようになっている。同じ秋葉原でも駅から離れた場所や、人通りの少ない場所での開催なら、ここまでの記録は達成できなかっただろう。

HIKKYは今後も現実空間でのイベント開催を計画している。またバーチャルマーケットが秋葉原で4万人もの人を集客したことを受けて、いくつかの企業が現実✕仮想空間を絡めたイベント企画の提案を始めているようだ。

誰もが知るアイドルや、強力なIPを起用できるなら秋葉原以外の場所でも集客は期待できるだろう。しかし広告塔となるコンテンツを確保できなければ、他の目的でその街に訪れた方々の興味を引くことはできないはずだ。

「やっぱりメタバースは失敗だ。人を呼べないんだ」と思われないように、現実世界にメタバースの存在を伝える機会を作るには、場所とコンテンツの両面でイベントを設計する必要があると考える。

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武者 良太 フリーライター

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むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

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