アメリカの「脱中国」実はまったく進んでなかった ベトナム、メキシコに経由地が変わっただけ

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アメリカに製造業を戻す取り組みにとって、これが何を意味するのかははっきりしない。こうした傾向がどの程度起こっているかについては、研究結果が異なるためだ。

それでも、極めて注目度の高いジャクソンホール会議に参加したエコノミストたちと同様、ここで紹介したいずれの研究者たちも、サプライチェーンで起きているシフトが世界貿易全体の縮小や、世界全体のつながりが希薄になっていることを意味するという考えには否定的だ。

企業が新しい工場を計画し、投資し、建設するのには時間がかかるため、グローバルなサプライチェーンの変化は総じてゆっくりと進行する。中国との地政学的な緊張が高まっていることや、中国経済が直面している問題がこのところ深刻化してきていることを考えると、グローバルなサプライチェーンのさらなる変化は避けられないだろう。

「脱中国」の経済的メリットは?

アルファロによれば、目下エコノミストたちに投げかけられている問題の1つは、工場をアメリカや他の友好国に戻すことで得られる経済的利益(アメリカの製造業における技術革新といったもの)が、最終的に製造回帰戦略のコスト、例えば消費者が支払う価格の上昇を上回るのかどうか、というものになる。

フロイントはこれとは別に、リショアリング(拠点の自国回帰)のコストに関する政府などの「考慮はあまりにも足りなかった」と考えている、と話した。

一般には「私たちはすべてを取り戻し、多くの雇用が生まれ、すべてが順調に進む」といったことが言われているが、「実際にはそうしたことを行うのは極めて高く付く」とフロイントは言う。「過去の物価上昇率が非常に低く保たれていた一因は、低コストの商品を輸入し、グローバル化を通じて生産性を向上させてきたことにあるからだ」

(執筆:Ana Swanson記者、Jeanna Smialek記者)
(C)2023 The New York Times

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