「この泣き声、どこから聞こえてるんだ?」
気になって声がする方に進むと、そこには皮を剥がれて血だらけになった白ウサギが横たわっていた。グ、グロい!! グロいことも気になるけど、白ウサギが……泣いてる?
「痛いよ、助けてよぉ……」
しゃべった。普通にしゃべった。転生だのなんだの言われて、ここまで来たらちょっとやそっとじゃ驚かないと思っていたけど、血まみれの白ウサギが泣きながらしゃべっているなんて、これはさすがについていけないわ。
「それにしても誰がこんなにひどいことを?」
「あ、あの……大丈夫?」
「グスッ……だまされた……あのクソ野郎ども! 『海で洗ったら良くなる』って言ってたのに。ちくしょうめ!」
「うわ、口悪っ!! その傷、海で洗ったの!?」
「そうだよ。ついさっき、ここを通りがかった連中にそう言われたんだ。言われたとおり海で体を洗ったら、痛み倍増だよ! 皮膚が乾いてパリパリするよ~」
「絶対タケルたちだな。あいつらどんだけしょうもないやつらなんだ! とりあえず海の水はダメだ、きれいな真水で洗わないと……ちょっと待って!」
持っていた大量の荷物をひっくり返すと、瓢箪が出てきた。振ってみると液体が入っている音がする。おそらく、この時代の水筒なんだろう。匂いを嗅いで一口飲んでみると、液体が水であることがわかった。
「ウサギさん、ちょいと染みるけど我慢してね!」
「ぎえーーーーー!!」
俺はパリパリになった白ウサギの皮膚に瓢箪の中の水をかけた。傷を刺激しないように、そっとかけたつもりだったが、白ウサギは絶叫しながらとんでもない勢いで飛び跳ねた。アニメでしか見たことがない現実離れした大ジャンプだ。
「おい、痛いじゃないか! さてはお前もさっきの連中の仲間で悪いやつなのか!?」
「違う違う! 水で洗い流さないともっとひどくなるぞ。ほら、こうやってちゃんと洗わないと……ちょっと痛いだろうけど我慢してくれ!」
「ぎゃーーーーーーーーー!!」
来たばかりのよくわからない異世界で、皮膚なし白ウサギを洗うだなんて、俺は夢でも見ているんだろうか。
「うぅ~……痛いけど、少しはマシになってきたよ。ありがとう。君、名前は?」
「えっと、俺の名前は……ナ、ナムチ! それにしても誰がこんなにひどいことを? さっき通りがかった連中が海水で傷を洗えって言ってきたってことは、君の皮をひん剥いたのは別の人なんだよね?」
「そうだよ、オイラの皮をひん剥いたのは恐ろしいツラしたワニの一族だ! あの野郎どもがオイラをこんな目に遭わせたんだ」
「ワ、ワニの一族?」
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