日韓に手を結ばせてアメリカが築く中国包囲網 経済まで飲み込む「安全保障」時代の日米韓合意
ところが時を経て、今や「経済安全保障」という言葉が登場し、経済・通商問題も安全保障問題の世界に組み込まれてしまった。
アメリカは対中戦略の一環として、半導体輸出規制や対中投資規制など中国に対する強硬政策を次々と打ち出している。それに対して日本政府は、さしたる異論もなく追随している。中国が軍事と経済を区別しないのであるから、対抗上、やむをえない面はあるだろう。
しかし、アメリカの変化は対中戦略にとどまらない。4月、サリバン大統領補佐官は講演で、アメリカの経済政策や通商政策の路線転換を宣言した。
まず、レーガン政権以来の柱である新自由主義や自由貿易体制を、アメリカ国内の産業空洞化と雇用喪失を招いたとして否定したのである。そのうえで中間層を元気にするための製造業復活や雇用確保を最優先し、国内法の整備や補助金の給付などの産業政策を推進するとしている。
アメリカの保護主義化とどう向き合うか
「サリバン・ドクトリン」とも呼ばれているこの考えは、明らかな自国中心主義、保護主義への転換であるとともに、次期大統領選に向けた支持拡大のための政策でもある。
これらの方針が単なる選挙向けキャンペーンで終わるのか、それとも次々と具体化されていくかは断言できない。しかし、すでにいくつかの法律が制定され、実施に移っている。
対中政策にとどまらないアメリカの経済政策の大転換に、自由主義経済を掲げる日本はどう向き合うのか。安保条約にある「国際経済政策におけるくい違い」はやがて顕在化していくだろう。
日本政府はアメリカ政府に対し、非公式に注文をつけたり要請をしているというが、中国や北朝鮮の脅威を前に、政府内外でいわゆる「安保屋」の勢いが増している中で、どこまでアメリカにもの申せるのかはおぼつかない。
国際社会や国家関係を軍事や安全保障だけで語ることはできない。相互の信頼関係のうえに、率直に議論していくのがあるべき同盟関係であるとすれば、日本は「もの言わぬ同盟」に陥らぬことが肝要である。
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