おもろすぎっ!「本当にあった医学論文」 「ネクタイは医学的によくない」など154編

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もう一方の症例報告となるとバラエティに富みすぎている。ここにも、別に論文にしとかんでもええやろ、というのがたくさんある。しかし、世の中には、おもろいことを知ったら他人に伝えたくてたまらなくなる、大阪人みたいな人がぎょうさんおるんでしょうね。

テレビで紹介できなさそうな話がたくさん……

本当にあった医学論文本当にあった医学論文 2 倉原 優(著)、中外医学社

まずは、いくつも紹介されている『異物系』論文。『第二次世界大戦の弾丸が70年も心臓の中に残っていた』というのは、テレビ番組でも紹介されそうなセンセーショナルな内容だ。が、テレビなんかで画像を紹介できなさそうな論文の方がおもろいに決まっている。

『まさか!の肛門異物』は、牛の角を肛門につっこんだ男の症例報告。なんでそんなことを、信じられんなぁ。と思うのは浅はか。なんと、それ以前に3例も報告があるらしい。う~ん、わけわからん……。『206発の弾丸を食べた人』がいると思えば、『横行結腸でゴキブリを発見!?』では、腹部膨満の患者さんの大腸にゴキブリがいたと。どちらも、精神疾患の患者さんらしいけど、想像しただけでちょとこわい。

導尿しようとして、自ら30センチものネギをおチンチンの先っぽからいれて抜けなくなった男性患者も論文になっている。肝心の、導尿できたかどうかが書かれていないのが気になって、尿道あたりがもぞもぞしてしまうやないの。しかし、これは、まぁ、目的が明確なので、理解できないわけではない。

が、性的嗜好を満たすために、尿道にロブスターの触覚をいれた男とか、10センチのフォークを柄の方からつっこんだ男とかになるとまったく理解が不能である。どちらも海外の話である。せめてお箸くらいにしときゃぁ病院へ行くようなはめにはならんかっただろうに、と、日本男子である私などは思ってしまうのである。

『3匹の虎の襲撃から生還した男性』、ってなんで医学的に報告する必要があるんや。一気飲みした理由がいちばん気になる、醤油を約1リットル飲んだけれど、大量の点滴で後遺症が残らなかった男性の『醤油の一気飲みで血清ナトリウム値が196mEq/L!』。ほかにも『魚が耳に刺さった!』とか、『飲んでいないのに酔う病気』とか、『精子によるアナフィラキシーショック』とか、そそられまくりの症例が。

医学専門の出版社の本であるが、ごく一部を除いて内容は平易なので、一般の人でも十分に理解できる。それに、論文の内容だけでなく、おもろい論文に対する倉原センセの解説が実にユーモアと愛情にあふれている。

しかし、こんだけの論文を集めるとは、ただものではありませんな。ブログを書いておられるというのでさぞかしおもろいことが、と期待したけど、むっちゃ真面目な医学的内容でございました。スンマセン。恐れ入りましたでございます。

仲野 徹 大阪大学大学院・生命機能研究科教授

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なかの とおる / Toru Nakano

1957年、大阪市旭区千林生まれ。大阪大学医学部卒業後、内科医から研究の道へ。京都大学医学部講師などを経て、大阪大学大学院・生命機能研究科および医学系研究科教授。HONZレビュアー。専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。著書に『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社、2017年)、『からだと病気のしくみ講義』(NHK出版、2019年)、『みんなに話したくなる感染症のはなし』(河出書房新社、2020年)などがある。

 

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