テクノロジーの発展が経済成長につながらない訳 逝去した「欧州最強の知性」による最後の問い
経済成長が停滞しても現代社会は存続できるのか
私の著書が日本語に翻訳されるのは、大変名誉なことだ。
本書が掲げるおもな疑問は次のとおりである。経済成長が停滞しても、現代社会は存続するのだろうか。日本は1990年代の金融危機以来、力強い経済成長を取り戻そうと努力してきただけに、この問いは日本にとってきわめて重要だろう。
実際に、ヨーロッパ諸国やアメリカなど、先進国全体の経済成長率は低迷している。フランスの経済成長率は、3%、1.5%、0.5%と、10年ごとに低下している。アメリカの経済成長率がフランスより高いのは確かだ。
だが、トマ・ピケティの研究によって明らかになったように、アメリカでは、経済成長の果実の大部分は、所得上位10%の懐に収まり、国民の90%は購買力の上昇とは無縁だった。ちなみに、所得上位1%は、経済成長の果実の55%を手中にした。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら