さらに中国は、24日の処理水放出実施後、すぐさま日本からの水産物について輸入を停止する旨の発表をした。これで、中国国民に慌てるな、といっても難しい。むしろ中国国民は中国政府から煽られたので、素直に鵜呑みにしたように感じる。
日本の水産物輸出への影響は?
ところで私は海洋放出について科学的な議論は解決していると考えている。しかし、いまだに処理水放出について懸念を示す人たちがいる。科学的懸念というよりも、「なんとなく怖い」といったものだろう。この原稿では、その科学的/非科学的な側面を深追いせずに、あくまで貿易の額から影響を調査する。
そこで2022年の水産物の輸出実績を見てみよう。
1 中華人民共和国 71,701,154 28%
2 アメリカ合衆国 39,289,864 15%
3 大韓民国 22,372,378 9%
4 台湾 21,151,716 8%
5 香港 20,173,913 8%
6 タイ 19,749,914 8%
7 ベトナム 18,961,893 7%
8 オランダ 6,202,585 2%
9 シンガポール 5,420,857 2%
10 インドネシア 3,571,445 1%
その他 28,080,421 11%
(財務省「貿易統計」から統計品目番号(HSコード)の「03」を抽出し、著者作成/単位は1000円)
*水産庁や農林水産省の統計では年間の合計が3000億円~3800億円とするものがある。これらの統計にはHSコード16類の「気密容器入りの魚(缶詰・瓶詰など)」「キャビア(缶詰・調製品)」関連が内包されていると思われるため、当表の数字と完全には一致しない
年間の合計が2567億円にいたる。そして目立つのはアメリカを大きく引き離す中国圏の存在だ。「中華人民共和国」と「香港」を合計すると919億円で全体のなかで36%の比率を占める。この分が、日本にとって打撃となる領域だ。このところの日本はアメリカや韓国、台湾とは良好な関係を継続しているが、この3つを足しても中国圏には及ばない。
なおあくまで参考だが、日本は2022年に1兆5279億円の水産物を輸入した。当然ながら、輸出よりも圧倒的に輸入が多い。その内訳を見てみると、トップは、チリやアメリカだった。中国は4位で1513億円(香港からは162億円)だった。全体の10%を中国からの輸入に頼る。
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