「動物と人間が電気柵で共存」サバンナ生活の過酷 南アフリカにみる環境破壊と雇用創出のリアル

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まず、農薬や殺虫剤の利用により、周辺の生態系はもちろん、人々の生活にも悪影響を与える可能性があります。また、周辺に暮らすゾウがオレンジの匂いを嗅ぎつけて、餌ほしさに保護区を出て農地に入ってしまうことも懸念されます。ゾウの侵入は、農作物や人にとって危険なだけではなく、そのゾウが射殺されてしまうことも心配されます。

ちなみに、この開発を進めた大規模農業の会社の主な輸出先は、日本やヨーロッパ、中東です。南アフリカのサバンナで巻き起こっている論争も、日本とは無関係とは言っていられないのです。

開発を進めるのは悪なのか

アフリカは鉱物資源豊かな大陸です。石炭、金、ダイヤモンド、そして私たちの生活に欠かせない携帯電話やパソコンに使われるレアメタル(希少金属)などの資源が見つかると、目先の経済的利益が優先され、野生動物たちの生息域が開発されてしまうという事態はアフリカ各地で起きています。

鉱物採掘や大規模農業の開発が進めば、その資源を運送するための道路や線路がつくられます。開発と共にそのエリアに暮らす人々の数は一気に増え、人間と動物が共存できるように電気柵が設けられます。しかしこういった道路や線路、柵は野生動物たちの生息域を分断してしまいます。かつては広大なエリアを移動しながら生きていた動物たちは本来の移動ができなくなり、分断された限られたエリアの中で生きていくことになります。それはつまり、限られた集団の中で繁殖が進むことを意味します。

血縁関係などでつながった同じ種の遺伝子間のみで繁殖が進むと、特定の病気や気候の変化に適応できず、全滅してしまうリスクが高まります。ある種が存続していくためには、遺伝的多様性はとても重要です。今サバンナで起きている、開発にともなうエリアの分断は、種の遺伝的多様性を大いに損なう可能性があります。今後何世代にもわたって健康的な生態系が存続するためには、こうした生息地の減少や分断が大きな課題となってくるのです。

しかし、こうしたリスクをあまり考慮せずに、農業や鉱業の開発を進める人々は果たして「悪い人」なのでしょうか? この問題について考える時、同時に覚えておかなくてはならないのは、これらは南アフリカの経済成長を支えてきた主要産業であるということです。どちらも雇用創出に大きく貢献しています。

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