「動物と人間が電気柵で共存」サバンナ生活の過酷 南アフリカにみる環境破壊と雇用創出のリアル
現在、南アフリカの保護区のほとんどは電気柵で囲われています。柵を設けることで野生動物が人間のエリアへ入ってしまったり、密猟者が保護区に侵入したりするリスクを抑えることができます。しかし柵があるからといって、野生動物と人間の共存が完全に実現するわけではありません。ヒョウやハイエナ、リカオン、チーターなどは柵の下をくぐって簡単に保護区と人間のエリアの間を行き来できてしまうのです。
保護区の柵沿いを車で走っていると、柵の下の地面が掘られているような箇所をよく見かけます。イボイノシシやツチブタなどが柵の下に掘った通り道の穴です。その部分を観察すると、比較的小柄なジャコウネコから大型のヒョウまで様々な足跡が見られ、実にいろいろな動物たちがこの通り道を利用して自由に保護区を行き来していることがわかります。またゾウが力ずくで柵を押し倒してしまい、どんな動物も通り放題、なんて状況になっているケースもあります。
生態的重要性を無視したオレンジ農地開発
また、開発をめぐる問題もたくさん起きています。2021年には私がガイドとして働くクルーガーエリアでも、私有地の土地開発をめぐって大きな論争が起きました。
クルーガーは、南アフリカでも有数の規模を誇る私営保護区であり、多くの野生動物が暮らしています。その中心部にある私有地で、環境面への配慮もなく、その土地の生態的重要性を無視したオレンジ農地開発の話が進められていたのです。
それを知った現地NGOが、開発計画の見直しを求めて訴えの声を上げましたが、開発許可を担当している局から十分な説明はないまま、エリアの一部が農地となってしまいました。開発が進められているエリアにはクラセリー川という多くの野生動物たちを支える水源となっている川があり、周辺の保護区までつながっています。そんなエリアで農地開発が進むと、どうなるでしょうか。
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