さきほど、こわばり動作に体を狂わせられるというお話をしましたが、たとえばデスクワークで「あごを引くと窮屈だから」と、少しあごを突き出していると、いつのまにか体は「それが正しい位置」と認識してしまいます。
ほかにも、患者さんに「腕を左右にまっすぐのばしてください」と申し上げると、左右の腕のどちらかが下がっていたり肩が前に出ていたりする方がほとんどです。これはご自身が水平だと思っていても、実際は「こわばり動作」の積み重ねで水平を再現できず、ずれた状態を体が水平と認識してしまうから。
これを「位置覚のずれ」と呼んでいます。
位置覚がずれていたら、こわばり動作から脱せるわけがありません。こうして延々とこわばり動作をくり返すうちに、体のどこかで、本来の働きとは別のことをさせられて割を食い、過労状態に陥る筋肉が生じます。
これが「こわばり筋」です。
一方で、働く機会を失って衰える筋肉も生じます。どちらも体の機能を低下させて、さまざまな痛みや不調を呼び寄せる原因となるもの。しかも、どこに生じているかわからないのがやっかいです。
なぜ「こわばり筋」が治らない痛みや不調を呼ぶのか
少しラクになることはあっても解消はできない、つらい肩こり。これも、こわばり筋の仕業です。たとえばスマホを見るときに背すじをのばして首の位置を正し続けていられたら、頭や体の重みを骨が支えてくれます。そうすると筋肉は、最低限の体の重みを支えるだけでいいためラクです。
しかし、背すじが丸まったりあごを突き出していたりしたら、本来は骨で支え、肩や背中などたくさんの筋肉が分担してくれる自然な姿勢と異なり、ごく一部の筋肉に負担が集中することがわかっています。
ほかの「もう治らないかも」とあきらめがちな痛みや不調も、どこかにできてしまったこわばり筋が関係している疑いあり。「肩がこるから」と硬くなっている筋肉をいくらもみほぐしたところで、その原因をつくったこわばり動作をやめないかぎり、こわばり筋は消えません。だから一時的によくなることはあっても治らないのです。
ちょっと怖いことを申し上げましたが、お伝えしたいことはシンプルです。肩の真ん中を押さえたまま首を左右に倒す、イスに腰掛け脚を左右に開いて上体を前に倒す、首の後ろ側をのばすといった簡単なセルフケア「こわばり筋ほぐし」をすると、痛みや不調の原因をつくったこわばり筋がその場でほぐれます。
しかも、続けるうちに、こわばり動作が自然に出にくくなるといった体質の変化も起こることが数万人の患者さんをケアするなか確認できているので、ぜひお試しください。
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